こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷』小路幸也

2021-05-31 19:55:13 | 読書感想
 
「家に帰ると猫がいた」
これだけなら、飼い猫、もしくは拾ってきた猫かな?と思うのですが、主人公の妻の姿が無く、猫に優美子と声を掛けると返事をするので、そのまま妻として一緒に暮らし始めます。

「いやいや、普通それで納得しないでしょう」というのは、凡人の考えなんでしょうか?
優美子は世話になった教授の一人娘で、変わっていると聞かされてはいたものの、詳しく聞く前に教授は他界したとの事。
そこで納得して受け入れるだけの事はあって、主人公の和野和弥は郷の蘆野原の長(おさ)筋で、様々なものにつく憂気というものを払える血筋らしいのです。

それからも優美子は、猫になったり人に戻ったりを繰り返し、話が進むにつれて彼女が猫になるのは、何は<事>が起きる前触れで、猫になった彼女の力が助けになる時だと分かってきます。

とはいえ、多美ちゃんの登場には、驚きました。

文明開化から戦争に向かっていく日本の中で、蘆野原と、そこに住まう人々の暮らしと在り方、変化などが描かれていて、この先を想うと、胸が詰まる思いがします。
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『さらば、神よ 科学こそが道を作る』リチャード・ドーキンス

2021-05-28 20:02:15 | 読書感想
 
ドーキンス博士の身近にあるキリスト教などの一神教ばかりでなく、世界中の多神教も含めての神々の有名どころの紹介から始まり、聖書の信憑性からその良し悪し、神は人が善良であるために必要なものなのか?など、様々な面から、人と神について考察していきます。

また、この世界が神によって創られたものなのかという事も、科学的視点で解き明かそうとされています。

この本にも書かれているように、アメリカでさえ、国民の半数近くが未だに宇宙は神が造られたと信じようとしているキリスト教社会で育ってこられた博士にとって、このような本を出されるのは、色んな意味で結構、勇気のいる事だったと思います。

幸いなのかどうかは分かりませんが、あまり宗教に頓着しない人々の多い国民性の日本に生まれ育った私としては、そこまで噛んで含めるように説明しないといけないほど、宗教の呪縛がすさまじいのかと、恐ろしくさえ感じました。
どの科学的知識も、私にとっては当たり前の身近なものでしたから。

ただ、だからと言って科学を万能なものだと思ってしまうのも、信仰と一緒で危ういものだと考えます。
できるだけ科学的に論理的に考えつつも、謙虚さは忘れないようにしたいと思いました。
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『あきない世傳 金と銀(十)合流篇』高田郁

2021-05-24 19:53:37 | 読書感想
 
呉服仲間から外されて、呉服商いを諦めざるを得なくなった五鈴屋江戸本店。
さらに、妹・結の裏切りが、皆の心に影を落としていた。

しかし幸ばかりでなく、奉公人たちも、新たな商機は無いかと考え、新しい浴衣地を考え出す。

今では、当たり前の夏の浴衣ですが、当時としては斬新だった事でしょうね。
最近は逆に、藍染めの浴衣の下に薄地の浴衣を着たりして、暑いのに合理的じゃないなあ、と思う事もあります。

この物語の中では、冬に浴衣をどう着るかという新しいアイディアが出てきていますが、これも楽しみですね。

まだまだ続きそうなこの物語。目が離せません。
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『国道食堂 2nd season』小路幸也

2021-05-19 19:58:59 | 読書感想
 
今回の連作短編それぞれの語り手は、全員女性。
冒頭から、トラックドライバーの黒岩蘭子の独白で、トラブルの予兆が感じられます。

前回、店内のプロレスリングで一人芝居をした二方一こと将一が、この一年でプロの人気俳優となり、めでたく同級生だった池野美智と、国道食堂で結婚式を挙げる事となり、それに便乗して店主の本橋十一と加藤和美が入籍報告をする事となります。

しかし、このトラブルの予感が、喜びに水をさします。
この不安が、思い過ごしなのかどうなのか?

まあねえ、ここの店主には、ボディガードとなる仲間がたくさんいますし、結果オーライだったけれども、現実ではこういう問題の結果として、暗いニュースばかりを知る事が多いんですよね。
だからこそ、いい物語なのに現実離れして見えてしまうのが残念でなりません。

現実も、この話のようにあって欲しいものです。
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『Story for you』講談社=編

2021-05-18 20:01:01 | 読書感想
 
コロナ禍の夏休みにWebサイト「tree」に発表された62編の短編をまとめたアンソロジー集だそうです。
その頃に、様々な人々がどう過ごしているのか?
日常の暮らしから、空想を大きく広げた作品まで。
作家さんによっては、ご自分の人気キャラクターを活躍させている方もいらっしゃいます。

冒頭の作品から、主人公が作る苺パフェを食べさせて欲しいと魔女がやってきたり、かと思えば、歴史上の人物がどのような困難を乗り越えたがために現代があるのかを描いたものもあったりと、かなりバラエティに富んだ幅広い本になっています。

私が特に好きなのは、
藤谷治さんの『へんな質問』
矢野隆さんの『争いのない国』
まさきとしかさんの『ボクは犬』
はやみねかおるさんの『怪盗道化師「学校を盗む話」』
浜口倫太郎さんの『憧れのファーストキス』
矢崎存美さんの『物語は踊る』
宮下恵茉さんの『きみにスイート』
阿部智里さんの『祖母の衣桁』
白尾悠さんの『三〇歳のあなたより』
折原みとさんの『太陽の子』
西尾維新さんの『Street for you』
です。

こうして見ると、結構、たくさんの作品が並んでいますね。
もちろん、他の作品も面白く、日によっては「いやいや、こちらの方が」という場合もあります。
何しろ、62作品ですから、どなたでもいくつかの好みの作品に出逢えると思います。
あまり本を読まないけど、チャレンジしてみたい方。
今までの好きな作家さんもいいけど、新規開拓したいという方にもおすすめです。
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