こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文

2018-09-30 19:32:57 | 読書感想
京都の美大に通う南山高寿は、電車の中で女の子に一目惚れし、日頃降りない駅で途中下車して彼女に告白した。
彼女の名前は福寿愛美。高寿の理想にとても近い「完璧」な女の子だった。
しかし、付き合い始めてしばらくして、愛美から驚きの告白を受ける。
彼女は「となりのせかい」からやって来たというのだ。

設定は某翻訳SFと同じですが、後からできた作品らしく、愛美のやがては高寿の互いを想う気づかいが深く感じられて、とても切なくなります。

某SFをご存知の方は、タイトルから「ああ、あれね」とすぐ分かると思います。
そういうわけで、翻訳物が苦手な方にぜひ、お薦めです。
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『病弱探偵 謎は彼女の特効薬』岡崎琢磨

2018-09-28 19:34:03 | 読書感想
高校1年生の貫地谷マイは、よく病気をするという弱点があり、幼なじみで隣人の山名井ゲンキが、お見舞いがてら学校から来るプリントなどを彼女に届けるのが日常の一部になっている。

マイは床に臥せっている時間が長く、そのかなりの割合を推理小説を読んで過ごしたために、自分の頭脳を働かせて何らかの謎を解くのが生きがいになってしまった。
そのため、ゲンキが来た時には謎めいた話をせがみ、そのうちゲンキの日課が謎を探す事になってしまった。

マイが夏風邪を引いた時には、不良っぽい男子高校生が万引きしているのを目撃され、スマホで撮影もされたにも関わらず、品物が失われていないという現象が起きた。

殺人事件こそ起きていないのですが、謎を解いてしまうと何とも後味の悪い気分になる、日常ミステリでした。
唯一「熱中症と《持ち去られた短冊》」が穏やかに読めた作品でした。
あと、健康体でいる時のマイはあんなにも可愛い性格で、でも、謎に無関心な少女なんですね。
あの落差には、驚きました。
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『未来製作所』太田忠司 北野勇作 小狐裕介 田丸雅智 松崎有理

2018-09-27 19:45:00 | 読書感想
移動やものづくりに焦点を当てた十編の「ショートショート」からなる作品集です。

クルマがそのまま住居となる世界を描いた「ワンルーマー」
パソコン自身が、持ち主の匂いを頼りにどこにいてもすぐ駆けつける、犬のような「dogcom.」
人間とロボットが共存している町のような工場を、見学ではなく散歩する「工場散歩」

ものづくりにテーマを絞っても多様な物語が生まれていて、とても楽しく読めます。

中でも
下半身不随になった登山が趣味の男が、再び登山をするようになるまでを描いた松崎有理さんの「山へ帰る日」
ダイヤモンドでできた惑星を発見した天文学者に共感を覚える、同じ著者の「天文学者の受難」
交通事故の無い世の中を目指した兄妹の半生、太田忠司さんの「ラプラスの兄妹」
歩く必要のない街で育った青年が、歩行補助機によって人の通わぬ砂漠に踏み出す小狐裕介さんの「砂漠の機械工」
亡き父のデジタル遺品によって両親の想い出をたどった、太田忠司さんの「つなげる思い」が、
とても印象深い作品になりました。
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『デートクレンジング』柚木麻子

2018-09-26 20:12:52 | 読書感想
家電メーカーの社員食堂の厨房で、栄養士として働いていた佐知子が結婚したのは5年前。
そこの社員で3歳年上の和田だった。
結婚後は、和田はそのままサラリーマンで、佐知子は義母の営む喫茶ミツで働き、少し心配事はあるものの、ほとんど穏やかに生活している。

そんな佐知子の友人・実花は、女性アイドルグループ「デートクレンジング」のマネージャーとしてバリバリ働き、メンバーばかりかファンにまで「マネミカ」として慕われていた。
しかし最近の実花は必死の様子で婚活に取り組み、ちっとも幸せそうじゃないのだ。

結婚して、子どもを産まないと、社会の一員として認められないのだろうか?

「デートクレンジング」の持ち歌「デートをぶっつぶせ」の詞がいいですね。
本人が心からしたいデートならともかく、他人の顔色をうかがって、自分のやりたい事よりデートを優先するのは、確かにおかしいです。
デートの呪いとは、よく言ったものだと思います。
ただ本作でも、それを発信した側の実花でさえ、その呪いに取り込まれてしまいましたし、私自身も30代の頃、似たような想いを抱いた事がありました。

もしかして、男女を問わず似たような状況に陥っている方がいらしたら、ぜひ、お読みください。
何かのヒントがあるかもしれません。
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コミックス『銀河の死なない子供たちへ(下)』施川ユウキ

2018-09-24 20:00:15 | アニメ・コミック・ゲーム
成長していくミラは、πとマッキに対して自分が変わっていくのに戸惑いながらも、幸せな時を刻んでいた。
しかし、姉弟の母親から彼らの不老不死の理由を知らされて・・・。

有限の命を持つが故に心身ともに苦痛を味わいながらも、彼らの母親からの誘惑に屈しなかったミラ。
私なら、痛みに負けたかもしれません。
ただミラは、永遠の命のあり様を見ていたから、あの道を選べたのかもしれないとも思いました。
また、限りある命を慈しむような、まるで命の賛歌を歌うような結末は、とても素晴らしいと感じられました。

とても、楽しかったです。
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