こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『なんとかしなくちゃ。青雲編』恩田陸

2023-01-30 20:28:57 | 読書感想
 
梯結子は、大阪で江戸時代から代々海産物問屋だった家庭の末っ子として生まれた。

祖父は健造、父は剛、上の兄は渡で次兄は豊、姉は智子という、それぞれが将来、自分の名前に見合ったセールストークを展開できる事を見越して付けられた名前である事は、想像に難くない。
だが結子は、いわゆるセールストークと聞いてイメージするような話好きで座持ちのいいタイプではなく、物静かで寡黙な方に入る。
姉がグループの中心になるタイプなら、妹はそのグループに1人いると安心なタイプである。

梯家は元々皆が名は体を表す人ばかりではありますが、特に結子は、ものごころついた頃に起きた年長児の砂場占拠事件を解決した事を始めとして、誕生日パーティーを平和で皆が幸福でいられるように主催したり、高校の新聞部とはいえ広告主がお得感を味わえるようなイベントを編み出したりと、確かに結子は人と人を結ぶ人物だと感じられました。

またこの物語は、恩田さんにしては小説内での作者の登場が多すぎると共に、かなり多弁でもありました(^^;)
恩田さんもそこで仰っていましたが、この話、まだまだ序盤です。
でも主人公が、地味なようでいて暗躍(違うっ!)しているので、今後の展開がかなり楽しみでもあります。
ぜひ!お読みください。
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『ホワイトルーキーズ2』佐竹アキノリ

2023-01-24 20:35:25 | 読書感想
 
今回のローテーションは、清水は産婦人科、風見は小児科で、その初日に緊急帝王切開手術に当たってしまい、二人とも無力感に苛まれる。
対しての朝倉は、緊急外来で表面の穏やかさの裏で、理不尽な患者に内心毒づくのだった。
一方、沢井は、患者からトラウマになりそうな仕打ちを受けそうになる寸前で朝倉に助けられる。

最近、医師が描く病院を舞台にした小説が多いように見受けられますが、私の読むその一部の小説と比べると、医療の現場がよく描かれているように思えます。

例えば患者さんを診察する時の対応はもちろん、患者さんご自身とそのご家族の言動、行動、時には一般的には犯罪行為なのに…という事など、いい事も悪い事も描いています。

3巻も出ているようなので、読もうかと考えています。
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『ホワイトルーキーズ』佐竹アキノリ

2023-01-24 20:07:57 | 読書感想
 
2020年春、新型コロナウイルス感染症が世界中で流行の兆しを見せ始めていた頃。

四人の研修医が、北海道の『空知総合病院』に採用された。

医学生には変人が多いというが、風見司が研修初日に出会った清水涼子、朝倉雄介、沢井詩織は、そうでもない様子なので、いくらか安心していた。
と言っても、地方の病院によっては誰であろうと採用せざるを得ずワケありの人物がいたりもするし、風見自身がそうであるので、人の事は言えなかったりする。

研修初日から現場で心肺蘇生を開始せざるを得ない状況になったりして、結構、物語に引き込まれます。
そして研修初めのそれぞれの科は、風見と清水が内科、朝倉は麻酔科、沢井は外科がら回るようになったようです。

風見は、不器用で採血が苦手な清水のために練習台になったり、結構いい人?
その不器用な清水は、誰よりも真面目で熱心、頑張り屋。
朝倉は、明るくノリの良い外面とは裏腹に、色々と重いものを持っているようで。
沢井はぶっきらぼうだけど、悪い子じゃない。

私が今まで読んだ事のある病院を舞台にした小説の中では、病院の日常を丁寧に書いていて好感が持てます。
ただ、医療介護など経験した事の無い方の中には、読むのに向いていない方がいるかもしれません。
少なくとも、食事前、中には読まない方がいいでしょう。
色んな意味で、リアルでした。
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『超短編!ラブストーリーどんでん返し』森晶麿

2023-01-20 20:33:24 | 読書感想
 
ミステリの黒猫シリーズでおなじみの森晶麿さんが描く、恋愛をテーマにしたショートショート集。
裏表紙の惹句には、古今東西・老若男女の・・・と書かれていますが、人外もいますのでスケールはもっと大きいです。

それとは別に、冒頭の《ジャンゴリウムにて》から「やられたなあ」と思わされましたし、《ある日、市場にて》では、やりきれなさを味わい、《乙女と祈り》には、寒気がしました。

私の好みとしては《アマデウスの雨宿り》《トゥー・マッチ・ラヴ》《おそれ》《Re:girl》がいいなと思いました。
秀逸なのは《プラネタリウム》でしょうかねえ?

とても楽しめるショートショート集でした。
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『馬鹿みたいな話!昭和36年のミステリ』辻真先

2023-01-16 19:39:31 | 読書感想
 
TV草創期の公共放送局のプロデューサーになった大杉日出夫のおかげで、ミステリドラマの脚本を任せてもらえる事となった新人ミステリ作家・風早勝利。

ところが、そのドラマの本番真っただ中に主演女優が殺された。

衆人環視下で鉄壁とも言える重いスタジオドアで閉じられたクローズドサークル状態の中、犯人はどうやって目撃されずに犯行に及んだか?
また、どのようにして姿をくらます事が出来たのか?

ドラマでさえ生放送でやり直しのきかない中、機材も未熟で壊れやすくトラブルやアクシデントに見舞われながら、それでもいいものを作ろうという時代の熱気を感じます。

そんな緊張感あふれる現場で起きた殺人事件。
結果的にクローズドサークルになってしまった理由の1つが、とても切なくも悲しいです。
逆に犯人も、動機が短絡的でろくに真偽を確かめもせずに犯行を行ったところに怒りを覚えつつも、悲しさと哀れさも感じました。
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