こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『バスクル新宿』大崎梢

2021-10-29 19:50:57 | 読書感想
 
夜行バスが出入りする新宿のバスターミナル、バスクル新宿を中心に、そこを利用する人々が出会う様々な謎を描いたミステリです。

山形のバスターミナルで電話相手に所在地を函館と偽った女性が行方不明になったのを皮切りに、部費を使い込んだと思われているサークル仲間を待ち伏せする大学生や、ご近所さんに渡すはずだった封筒をなぜか警察官が持ってきたため驚きと不思議に困惑する中学生など、少し心配な状況もあったりします。

そして、全ての謎が明らかになった時に新たに見えた謎。
何だか各話でやけに印象に残る現れ方をしていると思った人物がいましたが、最後にやはり!と感じる事となりました。

大げさに言えば、三行半に近い心境だったのかなあ?と考えたりもしました。
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『ボーンヤードは語らない』市川憂人

2021-10-25 19:40:46 | 読書感想
 
『ジェリーフィッシュは凍らない』で始まる一連のシリーズの刑事、マリアと漣が空軍での事件を解決し、その過程で思い出したそれぞれの若い頃に遭遇した後悔の残る事件が、描かれていきます。

そして末尾を飾るのは、二人の出逢いとコンビ結成最初の事件。

どの事件も、解決したからと言って達成感があるというよりも未然に防げなかった後悔や無力感など、様々な感情が錯綜します。
かと言って、なすがままではいつまで経ってもより良き方向へは向かわないからこそ、二人が警察組織に入ったのかもしれません。

なので、いつかは彼らが事件を未然に防げた、という物語を短編でいいので書いていただけたら嬉しいと思っています。
物語としては、盛り上がらないかもしれませんけどね。
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『ヴィクトリア朝英国人の日常生活(上)』ルース・グッドマン

2021-10-21 19:52:22 | 読書感想
 
この本は、文字通り当時の英国人の日常生活やそれにまつわる食べ物や日用品、習慣などが描かれています。

ヴィクトリア朝の英国人が朝目覚めるところから始まるのですが、どんなに裕福な家庭でも、非常時以外は寝室の暖炉に火が付いていず、寒さで震えるようです。
上巻は、朝食を摂って、様々な仕事をするところまでですが、朝食を摂るまででも仕事が多く、過酷だったり衛生上問題があったりします。

いくつか気になったのは、子どもに炭水化物ばかり食べさせていたため、富裕層で肥満はしていたとしても栄養失調だったりした事。
健康のためにと過剰に薄着だったり、辛抱強い性格に育てるためと称してあまり食べさせずにカロリー的にも栄養失調の子どももいたようです。

あと、驚いたのは、乳児を大人しく眠っていさせるためにアヘンチンキを常用したり、知らなかったとはいえとんでもない事をしていたのですね。
もしかして、シャーロック・ホームズの薬物依存は、アヘンチンキに端を発しているのではないかと思ったりしました。

逆に、日本の方が排泄物の処理が進んでいたのでは、という説は、状況によるかもと思えました。
当時のロンドンなどでも、糞尿を肥料として使おうとはしていたようですが、耕作地までの輸送距離の関係で、あまりうまくいかなかっただけのようです。

他にも、過酷な労働環境など、様々な問題があったようで、安易にヴィクトリア朝時代に行きたいとは言えませんねえ。
上巻だけでこれなので下巻でどういう生活が知れるのか、興味深くもあり怖くもあり、といったところです。
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『春となりを待つきみへ』沖田円

2021-10-19 20:00:47 | 読書感想
 
瑚春が人通りの多い大通りを仕事帰りに歩いていると、見知らぬ男にお願いをされた。
「俺を連れて行って」

気づいてみると冬眞と名乗るその人物は、瑚春のアパートに上がり込み、ちゃっかり住み着いて家事はするものの瑚春に養われていた。

当の瑚春は、ずっと一緒だと思っていた春霞がいなくなってから実家を飛び出し、一度も戻ることなく両親からの手紙さえ見ていない。
なぜなら、彼らが春霞を守ってくれなかったから彼がいなくなったと思っているから。
冬眞は、そんな瑚春の心をまるで春霞のように和ませ、少しずつ心を開かせていった。

しかしある事から、瑚春は冬眞の正体を知る事となる。

心の傷を負った女性が、何気ない出会いからその傷を癒していく、とても優しく、泣ける話だと思います。

ただ、裏表紙のあらすじはいただけません。
物語の90%は、明かしているではないですか?
今の若い読者は、そんなにも思いと違う内容を嫌うのでしょうか?
失敗と思えても、それで違った考えや発想に出会えて、いい経験だとは思えないのでしょうか?
また、新しい本を選ぶ時のヒントになるかもしれません。

確かに生活が厳しいのは分かるのですが、あまりにも無駄を嫌うのは、一歩間違うと怖い発想になるかもしれません。
例えば、嫌いな人物は無駄だから殺すとか、自分自身でさえ無駄と思えば自殺するとか。
考えすぎかもしれませんが、最近の世の中が殺伐としているのは、そういう考えもありそうで恐ろしく思います。

本作とは関係ありませんが、そういう事も考えてしまうあらすじではありました。
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『陰陽師 水龍ノ巻』夢枕獏

2021-10-16 19:47:55 | 読書感想
 
これまで清明が、博雅について「よい男だ」と言ってきた理由が、やっと分かってきました。

きっと他の読者の方々は、もっと先に理解されていたんだろうなあ、と思うと、自分自身の頭の鈍さにがっかりします。

博雅は、私とは別の意味で鈍い・・・と言うと聞こえが悪いのですが、自然の者なのですね。
さらに、自分自身の才能の高さに、あまりにも無頓着なだけに、そうでない方々の怒りを誘うと言いますか(^^;)

あと、この巻では、エドガー・アラン・ポーの作品に題材を得た、清明や博雅が全く出てこない作品も収録されています。
獏さんは無自覚なのか逆に乗っかっているのか、コロナ禍にタイミングが合いすぎて、不思議な気持ちになりました。
面白かったです。
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