尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

河島英昭、西城秀樹、フィリップ・ロス等-2018年5月の訃報②

2018年06月07日 22時28分55秒 | 追悼
 5月には多くの著名人が亡くなったけれど、僕が一番ショックだったのは河島英昭氏の訃報だった。(1933~2018.5.25、84歳)名前では判らないかもしれない。イタリア文学者で、東京外大名誉教授。イタリア文学の翻訳をたくさんした人である。特に20世紀前半の作家、チェーザレ・パヴェーゼの翻訳を、晶文社から出ていた全集で若いころにたくさん読んだ。確かそれは完結しなかったと思うけど、数年前に岩波書店から6巻の「パヴェ―ゼ文学集成」にまとまった。高いけど買ってある。

 他にもエーコ「薔薇の名前」、「デカメロン」、ヴェルガ「カヴァレリーナ・ルスティカーナ」(オペラで有名)など多数の翻訳がある。最近岩波文庫に「クアジーモド全詩集」「ウンガレッティ全詩集」が入った。まあイタリア文学に関心がない人には全然判らないと思うけど、僕は買ったまま読んでない河島氏の翻訳本をずいぶん持っている。ところで、画像検索しても河島氏の写真が出て来ない。翻訳した本はズラッと出てくるけど、本人の写真がない。新聞の訃報にも載ってないし、そういえば翻訳書でも見たことがない、たくさん読んでるけど、顔を全然知らない。そういう人である。 
 (西城秀樹) 
 一番大きく取り上げられたのは、西城秀樹だろう。1955.4.13~2018.5.16、63歳。あれ、同い年だったんだと訃報で初めて知った。歌謡界の本家「御三家」が皆存命なのに、「新御三家」から亡くなるとは。数年前に脳梗塞を患い、必死のリハビリで復帰したという話は聞いていたから、意外感はなかったけれど。デビュー当時、名前はもちろん知ってた。1979年の超大ヒット、「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」も、あの頃生きてた人なら全員知ってるだろう。でも他の曲やバーモントカレーのCMなんかは忘れていた。僕はヘテロだからキャンディーズなどに比べて、男性スターには関心がなかった。映画にも何本か出たが、1974年の「愛と誠」が評判になった。

 本を書いた人。絵本作家のかこさとし。(加古里子 1926~2018.5.2、92歳)名前は知ってたけど、こんなにたくさん本を出していたのか、こんなに大きな訃報になるのかと驚いた。東大工学部から昭和電工に入った技術系の人だから、科学絵本をたくさん作った。僕の子ども時代とはずれているので、読んだことはないと思う。直木賞作家の古川薫(1925~2018.5.5、92歳)は、山口県下関の生まれで長州出身者の時代小説をたくさん書いた。オペラ歌手の藤原義江をモデルにした「漂泊者のアリア」で1990年に直木賞。津本陽(1929~2018.5.26、89歳)は和歌山県生まれで、1978年に太地町の捕鯨を重厚に描いた「深重の海」(じんじゅうのうみ)で直木賞。剣道が得意で剣豪小説を多く書いた他、信長を描いた「下天は夢か」で知られたが読まなかった。
   (かこ、古川、津本)
 芸能人では井上堯之(たかゆき 1941~2018.5.2、77歳)は、ザ・スパイダースのギタリストだった人。解散後は井上堯之バンドを率いて、多くの歌手のバックバンドやテレビドラマのテーマ曲をつとめた。TBS「NEWS23」のアンカーを務めた毎日新聞の岸井成格(しげたか、1944~2018.5.15、73歳)は安保法案に対する毅然たる批判が印象的だった。当然のことを言ってただけだが、政権側からの反発があったと言われた。
  (井上堯之、岸井成格)
 光や映像を使った「メディアアートの先駆者」と言われる山口勝弘(5.2没、90歳)はすごく重要な人だったらしいけど、あまり知らない。シベリア抑留を描いた画家、宮崎進(5.16没、96歳)も名前を知らなかった。知らないと言えば、登山家の栗城史多(くりき・のぶかず、5.21没、35歳)も知らなかった。7大陸最高峰「単独無酸素」登頂を目指していて、最後のエベレストの8回目挑戦中に亡くなった。その登山スタイルにはいろんな意見があるらしいが、僕には判断ができない。
  (山口、栗城)
 最後にアメリカの作家、フィリップ・ロスが22日に亡くなった。85歳。僕は数年前にまとまって読んで圧倒的な読後感をブログに書いた。デビュー作「さようならコロンバス」(1959)で26歳でピュリッツァー賞を受けた。これはアメリカ東部の階級が違う若者の愛と性を描いていた。まだ60年代末の文化革命前の「純潔」意識が強かったアメリカ社会を描いている。その後も性を鋭い風刺で描く作品が多く、それがノーベル賞から遠ざけたのかもしれない。毎年のように候補と言われていたが。「ヒューマン・ステイン」が日本で翻訳された中では最高傑作だと思う。(アメリカで賞を取りながら未翻訳の小説がかなり多い。)新潮文庫で再刊された「素晴らしいアメリカ野球」は最初に読んだ時の興奮が忘れられない。反ユダヤ主義で知られた飛行家リンドバーグが大統領に当選しちゃったという「プロット・アゲンスト・アメリカ」もすごかった。アメリカ文学で最高のユダヤ系作家。
 (フィリップ・ロス)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする