「政党」は「私的結社」でありながら、日本でもっとも影響力の大きな組織(の一つ)である。近現代の歴史は政党が基本となる。前から政党の盛衰を書いてみたかったけれど、長くなりそうで書く気にならなかった。自民党から共産党まで、いろんな歴史がある。自民、公明、共産などはまだしも、10年前に政権を取った民主党がどういう経路をたどって「立憲民主党」と「国民民主党」(及びその他の人々)に別れていったのか。1993年に自民党を離党して以来、小沢一郎氏が順番に何という政党に所属していたのか。知らなくてもいいかもしれないが、自分はそういうトリビアに興味があるわけだ。
今回は「みんなの党」を取り上げる。「みんなの党」に特別な関心があるわけじゃない。ただ、「今はもうない」から書きやすい。6年前の参院選の時はまだあったから、その時に「みんなの党」から当選した議員は今回どうするんだろう。そんなことを思ったのも、調べてみたきっかけだ。2009年の民主党政権が出来た衆院選直前に、自民党の渡辺喜美(わたなべ・よしみ)が離党して、無所属議員の江田憲司とともに新党を結成した。それが「みんなの党」の発足である。自民から山内康一、民主から浅尾慶一郎が参加した。準備不足だったが、東京で柿沢未途が比例区で当選して、5議席を獲得した。
(川田龍平が入党、左から江田、川田、渡辺)
2010年参院選では、なんと10議席を獲得した。選挙区で3、比例区で7である。公明党が9議席で、つまり「みんなの党」の方が多かった。比例区票でも民主党、自民党に続き、第3党。公明党が第3党じゃなかったのは非常に珍しい。この時点が「みんなの党」の短い絶頂期である。2013年参院選では、選挙区4、比例区4の8議員が当選して、計18議席となった。しかし、比例区の得票は第6位。共産党よりも少ない。理由は簡単で、2012年末に結成された「日本維新の会」が比例区で6議席を取ったからだ。
「日本維新の会」は、地方政党「大阪維新の会」が国政に乗りだし、石原慎太郎らの「太陽の党」と合同して作られた。2012年衆院選で一躍54議席を獲得し、第3党となった。「みんなの党」を含めて、もう誰も覚えていないような経過をたどって分裂を繰り返した。「結いの党」とか「維新の党」とか、もう誰も判らないだろう。「みんな」と「維新」は協力と対立を繰り返した。そもそも2012年衆院選の前に、「維新」から出馬したいと「みんな」の参院議員3人が離党を表明したのである。2013年12月になると、渡辺代表と江田幹事長の対立が激化、ついに江田グループが離党するに至る。
2014年3月に、渡辺代表が参院選前に化粧品会社DHCの社長吉田嘉明から3億円を借りていたことが発覚した。2012年衆院選前にも5億円を借りていた。政治資金として届け出ていないため、違法ではないかと追求された。結局「個人的な借り入れ」として法的には不問になったが、政治的ダメージとなり代表を辞任した。浅尾慶一郎が代表となったが、2014年末の衆院選を前に路線対立が激しくなり、解党するに至った。「自民党でも民主党でもない」という位置取りに意味があるように見えた時代は短かった。民主党政権下で、「立ちあがれ日本」とか舛添要一の「新党改革」などが結成された。渡辺喜美や舛添要一が自民党に残っていたら、彼らが首相だったのかもしれない。
衆議院議員全員を見ていると長くなるから、最初に当選した5人だけ見ておきたい。
★渡辺喜美 2014年衆院選で落選、2016年参院選比例区に「維新」から当選。2017年都議選で「都民ファーストの会」を支持して除名。「希望の党」には参加せず、現在、無所属の参議院議員。
★江田憲司 2013年に離党、「結いの党」結成。2014年「維新の党」、2016年「民進党」、2017年衆院選には無所属で当選。「無所属の会」を経て、院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」。
★浅尾慶一郎 2014年衆院選に無所属で当選。2016年自民党の院内会派に入会、2017年自民党入党。2017年衆院選は自民党は山本朋広を公認し、無所属で立候補して落選。
★山内康一 神奈川9区の自民党議員から、離党して「みんなの党」比例北関東ブロックで2009年、2012年に当選。解党後、民主党に入党、2014年衆院選に埼玉13区から出馬し落選。2017年衆院選に福岡3区で立憲民主党から立候補して比例区で当選。
★柿沢未徒 2009年衆院選で「みんなの党」から比例区で当選。2012年は「みんな」、2014年は「維新の党」で東京15区から当選。一時は「維新の党)幹事長を務めるも解任。民進党を経て、2017年衆院選は「希望の党」から比例区で当選。「国民民主党」に参加せず無所属。現在、院内会派「社会保障を立て直す国民会議」所属。
四分五裂状況がよく判る。こうやって詳しく見ると大変すぎるので以下は簡単に。
◎2010年参院選当選、2016年の政治行動
松田公太(東京) 「日本を元気にする会」を経て、2016年は出馬せず政界引退。
水野賢一(千葉) 「無所属クラブ」を経て民進党。2016年は民進党から出馬して落選。
中西健治(神奈川) 2016年は自民党推薦の無所属で当選。追加公認を受けて自民党参議院議員
柴田巧(比例) 16年民進党から比例で落選。17年衆院選「希望の党」で落選。19年維新から比例区立候補
江口克彦(比例) 16年は立候補せず政界引退
上野宏史(比例) 12年参院辞任、維新から衆議院比例当選。14年落選。17年自民党から比例区当選
寺田典城(比例) 16年立候補せず。17年秋田知事選に立候補して落選。
小野次郎(比例) 16年民進党から出馬して落選。
小熊慎司(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選、14年維新の党、17年希望で当選。国民民主党衆院議員。
桜内文城(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選。14年次世代の党、17年希望から出馬して落選。
真山勇一(比例) 12年繰り上げ当選。16年民進党から神奈川で当選。立憲民主党参議院議員。
藤巻幸夫(比例) 12年繰り上げ当選。14年死去。
山田太郎(比例) 12年繰り上げ当選。16年「新党改革」から立候補して落選。19年自民党比例区で立候補。
田中茂(比例) 14年繰り上げ当選。解党後、自民党会派入会、16年立候補せず。
◎2013年参院選当選、2019年の政治行動
松沢成文(神奈川) 次世代の党、希望の党を経て、19年「日本維新の会」から立候補中。
行田邦子(埼玉) 解党後は無所属、希望の党を経て、19年は立候補せず。埼玉県知事選立候補予定。
薬師寺道代(愛知) 無所属クラブを経て、19年は立候補せず、自民党から次期衆院選出馬予定。
和田政宗(宮城) 次世代の党を経て、自民党入党。19年は自民党から比例区立候補中。
川田龍平 結いの党、維新の党、民進党を経て、19年は立憲民主党から比例区立候補中。
山口和之 「日本を元気にする会」を経て、維新の会入党。19年維新から比例区立候補中。
渡辺美知太郎 無所属を経て、自民党会派入会。19年、那須塩原市長選に出馬して当選。
井上義行 「日本を元気にする会」を経て、自民党会派入会。19年は自民党から比例区出馬中。
大分細かな話になって、選挙、政治家ウォッチャー以外は関心がないかと思う。以上を総計してみる気もないけど、結局「自民党に戻った」が一番多いように思う。「維新」に居場所を求めたものが次ぐ。江田憲司グループは「結いの党」「維新の党」「民進党」を経て、立憲民主党に属する人も多い。「希望の党」から「国民民主党」入りしているのは小熊慎司だけだろう。「みんなの党」に関わって、分裂を繰り返したあげく議席を失った人も多い。まあ渡辺喜美を「改革者」だと錯覚したことが「人を見る目」がなかった。ブームはあっという間に去るものだ。今回の参院選で何人が当選することやら。
今回は「みんなの党」を取り上げる。「みんなの党」に特別な関心があるわけじゃない。ただ、「今はもうない」から書きやすい。6年前の参院選の時はまだあったから、その時に「みんなの党」から当選した議員は今回どうするんだろう。そんなことを思ったのも、調べてみたきっかけだ。2009年の民主党政権が出来た衆院選直前に、自民党の渡辺喜美(わたなべ・よしみ)が離党して、無所属議員の江田憲司とともに新党を結成した。それが「みんなの党」の発足である。自民から山内康一、民主から浅尾慶一郎が参加した。準備不足だったが、東京で柿沢未途が比例区で当選して、5議席を獲得した。

2010年参院選では、なんと10議席を獲得した。選挙区で3、比例区で7である。公明党が9議席で、つまり「みんなの党」の方が多かった。比例区票でも民主党、自民党に続き、第3党。公明党が第3党じゃなかったのは非常に珍しい。この時点が「みんなの党」の短い絶頂期である。2013年参院選では、選挙区4、比例区4の8議員が当選して、計18議席となった。しかし、比例区の得票は第6位。共産党よりも少ない。理由は簡単で、2012年末に結成された「日本維新の会」が比例区で6議席を取ったからだ。
「日本維新の会」は、地方政党「大阪維新の会」が国政に乗りだし、石原慎太郎らの「太陽の党」と合同して作られた。2012年衆院選で一躍54議席を獲得し、第3党となった。「みんなの党」を含めて、もう誰も覚えていないような経過をたどって分裂を繰り返した。「結いの党」とか「維新の党」とか、もう誰も判らないだろう。「みんな」と「維新」は協力と対立を繰り返した。そもそも2012年衆院選の前に、「維新」から出馬したいと「みんな」の参院議員3人が離党を表明したのである。2013年12月になると、渡辺代表と江田幹事長の対立が激化、ついに江田グループが離党するに至る。
2014年3月に、渡辺代表が参院選前に化粧品会社DHCの社長吉田嘉明から3億円を借りていたことが発覚した。2012年衆院選前にも5億円を借りていた。政治資金として届け出ていないため、違法ではないかと追求された。結局「個人的な借り入れ」として法的には不問になったが、政治的ダメージとなり代表を辞任した。浅尾慶一郎が代表となったが、2014年末の衆院選を前に路線対立が激しくなり、解党するに至った。「自民党でも民主党でもない」という位置取りに意味があるように見えた時代は短かった。民主党政権下で、「立ちあがれ日本」とか舛添要一の「新党改革」などが結成された。渡辺喜美や舛添要一が自民党に残っていたら、彼らが首相だったのかもしれない。
衆議院議員全員を見ていると長くなるから、最初に当選した5人だけ見ておきたい。
★渡辺喜美 2014年衆院選で落選、2016年参院選比例区に「維新」から当選。2017年都議選で「都民ファーストの会」を支持して除名。「希望の党」には参加せず、現在、無所属の参議院議員。
★江田憲司 2013年に離党、「結いの党」結成。2014年「維新の党」、2016年「民進党」、2017年衆院選には無所属で当選。「無所属の会」を経て、院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」。
★浅尾慶一郎 2014年衆院選に無所属で当選。2016年自民党の院内会派に入会、2017年自民党入党。2017年衆院選は自民党は山本朋広を公認し、無所属で立候補して落選。
★山内康一 神奈川9区の自民党議員から、離党して「みんなの党」比例北関東ブロックで2009年、2012年に当選。解党後、民主党に入党、2014年衆院選に埼玉13区から出馬し落選。2017年衆院選に福岡3区で立憲民主党から立候補して比例区で当選。
★柿沢未徒 2009年衆院選で「みんなの党」から比例区で当選。2012年は「みんな」、2014年は「維新の党」で東京15区から当選。一時は「維新の党)幹事長を務めるも解任。民進党を経て、2017年衆院選は「希望の党」から比例区で当選。「国民民主党」に参加せず無所属。現在、院内会派「社会保障を立て直す国民会議」所属。
四分五裂状況がよく判る。こうやって詳しく見ると大変すぎるので以下は簡単に。
◎2010年参院選当選、2016年の政治行動
松田公太(東京) 「日本を元気にする会」を経て、2016年は出馬せず政界引退。
水野賢一(千葉) 「無所属クラブ」を経て民進党。2016年は民進党から出馬して落選。
中西健治(神奈川) 2016年は自民党推薦の無所属で当選。追加公認を受けて自民党参議院議員
柴田巧(比例) 16年民進党から比例で落選。17年衆院選「希望の党」で落選。19年維新から比例区立候補
江口克彦(比例) 16年は立候補せず政界引退
上野宏史(比例) 12年参院辞任、維新から衆議院比例当選。14年落選。17年自民党から比例区当選
寺田典城(比例) 16年立候補せず。17年秋田知事選に立候補して落選。
小野次郎(比例) 16年民進党から出馬して落選。
小熊慎司(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選、14年維新の党、17年希望で当選。国民民主党衆院議員。
桜内文城(比例) 12年参院辞任、維新から衆院当選。14年次世代の党、17年希望から出馬して落選。
真山勇一(比例) 12年繰り上げ当選。16年民進党から神奈川で当選。立憲民主党参議院議員。
藤巻幸夫(比例) 12年繰り上げ当選。14年死去。
山田太郎(比例) 12年繰り上げ当選。16年「新党改革」から立候補して落選。19年自民党比例区で立候補。
田中茂(比例) 14年繰り上げ当選。解党後、自民党会派入会、16年立候補せず。
◎2013年参院選当選、2019年の政治行動
松沢成文(神奈川) 次世代の党、希望の党を経て、19年「日本維新の会」から立候補中。
行田邦子(埼玉) 解党後は無所属、希望の党を経て、19年は立候補せず。埼玉県知事選立候補予定。
薬師寺道代(愛知) 無所属クラブを経て、19年は立候補せず、自民党から次期衆院選出馬予定。
和田政宗(宮城) 次世代の党を経て、自民党入党。19年は自民党から比例区立候補中。
川田龍平 結いの党、維新の党、民進党を経て、19年は立憲民主党から比例区立候補中。
山口和之 「日本を元気にする会」を経て、維新の会入党。19年維新から比例区立候補中。
渡辺美知太郎 無所属を経て、自民党会派入会。19年、那須塩原市長選に出馬して当選。
井上義行 「日本を元気にする会」を経て、自民党会派入会。19年は自民党から比例区出馬中。
大分細かな話になって、選挙、政治家ウォッチャー以外は関心がないかと思う。以上を総計してみる気もないけど、結局「自民党に戻った」が一番多いように思う。「維新」に居場所を求めたものが次ぐ。江田憲司グループは「結いの党」「維新の党」「民進党」を経て、立憲民主党に属する人も多い。「希望の党」から「国民民主党」入りしているのは小熊慎司だけだろう。「みんなの党」に関わって、分裂を繰り返したあげく議席を失った人も多い。まあ渡辺喜美を「改革者」だと錯覚したことが「人を見る目」がなかった。ブームはあっという間に去るものだ。今回の参院選で何人が当選することやら。