1回目は参議院選挙の「比例代表」が「非拘束名簿式」になったところまで書いた。制度の移り変わりを見ると、かつては「全国区」(1947~1980)があり、それが「拘束名簿式比例代表」(1983~1998)に変わり、2000年に「非拘束名簿式」になったわけである。2001年から現在まで、今のところ7回行われている。有権者は「政党名」または「候補者名」のどっちかを書く。その票を合計して「党の得票」として、その票数をもとに各党に議席を配分する。各党の候補者は、個人得票の多い順番に当選となる。
そこで一見すると、おかしなことも起こる。有名人候補が一人でたくさん得票すると、同じ党の個人得票の少ない候補者まで当選になる。一方、一人だけたくさん取っても、他の候補者や党名票が少ないと、合計した場合当選に届かないことがある。下の図表には「同じく100万票を獲得して、3議席が当選となった」という例が出ている。A党は有名候補が一人で96万票も取ったため、1万票しか入ってないC候補まで当選する。一方、B党は20万、18万、15万、14万と得票したが、14万票のD候補は落選。
候補者名か党名かどっちかを書くと言っても、やってみたら「党名得票」が圧倒的に多かった。これは意外な感じがするが、タレント候補が少なくなった今、組織に所属していない有権者には候補者がよく判らないということだろう。前回2016年参院選を見てみると、自民党は約2千万票を獲得したが、そのうち1500万票が党名だった。2位の民進党(当時)も1175万のうち、875万が党名。共産党が一番党名得票度が高く、600万票のうち560万票近くが党名である。これは「党名投票」を呼びかけているのである。一方、公明党は個人得票度が高い。750万票ほどのうち、党名票は388万票で約半数が個人票。
公明党は毎回「重点候補」を地区別に決めて個人名投票を徹底している。しかし、それは堅い支持者で、その周りに党名を書く「弱い支持層」がいるんだろう。21世紀の参院選比例区で、公明党は6~8議席を獲得している。ここ2回ほど7人が当選しているが、確実に当選を期すために「重点候補」は6人となっている。全部で17人が立候補しているが、公明党ホームページを見ても6人しか出てないという徹底ぶりだ。そのため、毎回のように個人名の最多得票は公明党である。(過去6回のうち、2001年は舛添要一が最多で、その後は全部公明党。)2016年は94万から38万で6人の重点候補が当選し、7議席まで当選となったため、次は1万8千票の候補に議席が回ってきた。
その逆もあって、2010年は公明党が6人当選に止まったため、重点候補のうち得票が最少だった浮島智子が44万5千票で落選した。この年は民主党政権の与党だった国民新党が当選に届かず、40万票を取った長谷川憲正が落選した。これが最多個人得票落選者の1位と2位になっている。そういう事例は毎回のように起こっていて、2013年は緑の党の三宅洋平が17万6970票、2016年は新党改革の山田太郎が29万1188票の個人票があったが落選した。そのたびに「おかしい」と声を挙げる人が出てくるが、まあ制度上は仕方ない。(山田太郎は今回は自民から出たから当選するかもしれない。)
ところで、参議院の比例代表は2001年から定数が2つ減って48議席となった。それが2019年から50議席に戻された。そして各党に2議席分の「特定枠」なるものが作られた。「特定枠」は個人票の得票に関係なく、最上位にある。だから自民党の「特定枠」2人は、もう当選したのと同じである。その二人は島根県と徳島県出身者。前回2016年から、有権者数が少ない県が合区され「鳥取・島根」「徳島・高知」の両選挙区が出来た。2016年は鳥取、高知で自民党議員がいなかったので、島根、徳島の現職議員がスムーズに選ばれた。しかし、2013年は自民党が圧勝したので、4県すべてに自民党議員がいた。
2019年は前回と逆に、鳥取、高知選出議員を合区の候補者とすることになった。そうなると、島根、徳島から2013年に当選した現職議員の処遇が問題となる。それが比例区の「特定枠」なのである。今回の自民党「特定枠」候補者は、島根と徳島の候補だ。(島根県の現職議員は選挙直前に死去したので、衆議院の比例当選者が候補に選ばれた。)もともと「合区」に反対が強い。しかし、日本は連邦制ではないのだから、人口をもとに「国民の代表」を選ぶのは憲法上の要請だ。今後、もっと「合区」が多くなれば、「特定枠」も増やすんだろうか。こういう訳の判らない仕組みを作るぐらいなら、「事前に順位を付ける」が「同率順位にして個人得票で決めてもいい」という方がいいんじゃないか。
この「特定枠」候補にも個人名で投票してもいい。しかし、ほとんど個人の選挙運動はしてはいけないという。もちろん個人票の数に関係なく、優先して当選である。どうも変な制度だ。この制度導入に反対した野党各党は「特定枠」を使わなかった。選管へ「特定枠」を届け出たのは「れいわ新撰組」と「労働者の解放をめざす労働者党」だけだった。「れいわ新撰組」というのは、ネーミングが変だけど例の山本太郎新党である。「特定枠」を障がい者の候補2人に割り充てたから、山本太郎本人は3人目以下になる。話題にはなっているようだが、正直言って三人当選は難しいだろう。山本太郎が今回の最多個人得票落選者になる可能性が高い。それをどう考えるかはいろいろあると思うが。
参議院の選挙方法は、衆議院以上に問題が多い。特に選挙区の方が変だ。1人区がいっぱいあって、2人区、3人区、4人区もあり、東京は6人も当選する。自民2人、公明1人だから、野党内の配分だけが焦点。人口が230万ほどの宮城県までが1人区で、260万の京都府、280万の広島県が2人区というのも納得しにくい。「合区」以前にもう都道府県ごとの選挙が無理だろう。僕は地区ブロック別に「非拘束名簿式」の比例選挙一本にするべきだと前から書いている。
そこで一見すると、おかしなことも起こる。有名人候補が一人でたくさん得票すると、同じ党の個人得票の少ない候補者まで当選になる。一方、一人だけたくさん取っても、他の候補者や党名票が少ないと、合計した場合当選に届かないことがある。下の図表には「同じく100万票を獲得して、3議席が当選となった」という例が出ている。A党は有名候補が一人で96万票も取ったため、1万票しか入ってないC候補まで当選する。一方、B党は20万、18万、15万、14万と得票したが、14万票のD候補は落選。
候補者名か党名かどっちかを書くと言っても、やってみたら「党名得票」が圧倒的に多かった。これは意外な感じがするが、タレント候補が少なくなった今、組織に所属していない有権者には候補者がよく判らないということだろう。前回2016年参院選を見てみると、自民党は約2千万票を獲得したが、そのうち1500万票が党名だった。2位の民進党(当時)も1175万のうち、875万が党名。共産党が一番党名得票度が高く、600万票のうち560万票近くが党名である。これは「党名投票」を呼びかけているのである。一方、公明党は個人得票度が高い。750万票ほどのうち、党名票は388万票で約半数が個人票。
公明党は毎回「重点候補」を地区別に決めて個人名投票を徹底している。しかし、それは堅い支持者で、その周りに党名を書く「弱い支持層」がいるんだろう。21世紀の参院選比例区で、公明党は6~8議席を獲得している。ここ2回ほど7人が当選しているが、確実に当選を期すために「重点候補」は6人となっている。全部で17人が立候補しているが、公明党ホームページを見ても6人しか出てないという徹底ぶりだ。そのため、毎回のように個人名の最多得票は公明党である。(過去6回のうち、2001年は舛添要一が最多で、その後は全部公明党。)2016年は94万から38万で6人の重点候補が当選し、7議席まで当選となったため、次は1万8千票の候補に議席が回ってきた。
その逆もあって、2010年は公明党が6人当選に止まったため、重点候補のうち得票が最少だった浮島智子が44万5千票で落選した。この年は民主党政権の与党だった国民新党が当選に届かず、40万票を取った長谷川憲正が落選した。これが最多個人得票落選者の1位と2位になっている。そういう事例は毎回のように起こっていて、2013年は緑の党の三宅洋平が17万6970票、2016年は新党改革の山田太郎が29万1188票の個人票があったが落選した。そのたびに「おかしい」と声を挙げる人が出てくるが、まあ制度上は仕方ない。(山田太郎は今回は自民から出たから当選するかもしれない。)
ところで、参議院の比例代表は2001年から定数が2つ減って48議席となった。それが2019年から50議席に戻された。そして各党に2議席分の「特定枠」なるものが作られた。「特定枠」は個人票の得票に関係なく、最上位にある。だから自民党の「特定枠」2人は、もう当選したのと同じである。その二人は島根県と徳島県出身者。前回2016年から、有権者数が少ない県が合区され「鳥取・島根」「徳島・高知」の両選挙区が出来た。2016年は鳥取、高知で自民党議員がいなかったので、島根、徳島の現職議員がスムーズに選ばれた。しかし、2013年は自民党が圧勝したので、4県すべてに自民党議員がいた。
2019年は前回と逆に、鳥取、高知選出議員を合区の候補者とすることになった。そうなると、島根、徳島から2013年に当選した現職議員の処遇が問題となる。それが比例区の「特定枠」なのである。今回の自民党「特定枠」候補者は、島根と徳島の候補だ。(島根県の現職議員は選挙直前に死去したので、衆議院の比例当選者が候補に選ばれた。)もともと「合区」に反対が強い。しかし、日本は連邦制ではないのだから、人口をもとに「国民の代表」を選ぶのは憲法上の要請だ。今後、もっと「合区」が多くなれば、「特定枠」も増やすんだろうか。こういう訳の判らない仕組みを作るぐらいなら、「事前に順位を付ける」が「同率順位にして個人得票で決めてもいい」という方がいいんじゃないか。
この「特定枠」候補にも個人名で投票してもいい。しかし、ほとんど個人の選挙運動はしてはいけないという。もちろん個人票の数に関係なく、優先して当選である。どうも変な制度だ。この制度導入に反対した野党各党は「特定枠」を使わなかった。選管へ「特定枠」を届け出たのは「れいわ新撰組」と「労働者の解放をめざす労働者党」だけだった。「れいわ新撰組」というのは、ネーミングが変だけど例の山本太郎新党である。「特定枠」を障がい者の候補2人に割り充てたから、山本太郎本人は3人目以下になる。話題にはなっているようだが、正直言って三人当選は難しいだろう。山本太郎が今回の最多個人得票落選者になる可能性が高い。それをどう考えるかはいろいろあると思うが。
参議院の選挙方法は、衆議院以上に問題が多い。特に選挙区の方が変だ。1人区がいっぱいあって、2人区、3人区、4人区もあり、東京は6人も当選する。自民2人、公明1人だから、野党内の配分だけが焦点。人口が230万ほどの宮城県までが1人区で、260万の京都府、280万の広島県が2人区というのも納得しにくい。「合区」以前にもう都道府県ごとの選挙が無理だろう。僕は地区ブロック別に「非拘束名簿式」の比例選挙一本にするべきだと前から書いている。