フランスのジャック・オーディアール監督が作った異色の西部劇「ゴールデン・リバー」が公開中。まあちょっと外している感じもあるけれど、力作には間違いない。今日書かないとそのまま終わりそうだから、簡単に書いておきたい。原題が「The Sisters Brothers」って言う。ふざけているんじゃなくて「シスターズ」という姓を持つ兄弟ガンマンの話である。パトリック・デウィットの小説が原作で、2011年の英国ブッカー賞の最終候補5作に入った作品。日本でも創元推理文庫から邦訳がある。
原作が多分重厚なんだろうが、この映画もじっくり描いて進行が遅い。こんな話だったかと最後の方まで判らない。西部劇と言っても、見るものにガンファイトのカタルシスをもたらすエンタメ作品ではない。画面もずっと暗いし、冒頭からして真夜中の銃撃戦。お互いに全然判らない中で撃ち合っている。西部劇(ウェスタン)は世界中で「西部劇風」の娯楽作が作られた。でも「アメリカ西部」を舞台にすることが西部劇と呼ばれる条件だろう。この映画はフランスの監督がスペインでロケした映画だが、場所は「オレゴン準州」という設定。俳優もアメリカ人を使った英語映画で西部劇になる。
シスターズ兄弟はオレゴン準州の提督(と字幕にある)に雇われて、ヒットマンをしている。相当に優秀で相手が多くても皆殺しにしている。チャーリー(ホアキン・フェニックス)が主導的なんだけど弟。兄のイーライ(ジョン・C・ライリー=映画化権を獲得して製作を兼ねている)は、早くやめて故郷に帰りたがっているが弟の面倒を見ている。兄弟が殺し屋で、そのために先行して標的を探す役がジョン・モリス(ジェイク・ギレンホール)。その標的はハーマン・カーミット・ワーム(リス・アーメット)で、モリスはうまいことハーマンに近づき捕えてしまう。
(シスターズ・ブラザーズの二人)
それで終わりなら映画にならない。このハーマンという男は、実は金を見つける化学物質の化学式を見つけたというのである。追われているのは実はその化学式が欲しいからだという。そして自分の最終目的は、金を見つけることではなく、その儲けでダラスに理想的な共同体を作るんだという。その話にモリスも共感して、二人は仲間になってしまった。シスターズ兄弟もそれを知り、オレゴンからカリフォルニアで追いかけてゆく。途中で様々なジャマが入るけど、もう川で金探しを始めている二人を見つける。そこを別のグループに襲撃され、結局4人で共闘することになった。
そして川に「とある薬品」を流し出すと…、ホントかよと思うけど、金鉱石がピカピカ光り出すではないか。ここが凄いと言えば凄いけど、こんな物質があるんだろうか。ないでしょ、金に反応するなんて。むしろ黄鉄鉱かなんかに反応しているんだったら判らないでもないが。そしてチャーリーはこの光輝く川を見て、欲望に駆られてしまう。そこから崩壊への道は一直線。アレレと思う間に全てが終わってしまう。この成り行きの元を作ったオレゴン準州提督も襲うつもりで、行ってみたら死んだところだった。何か全ては夢で、全てはムダだったのか。馬を駆けて草原や山を行く美しいシーンが多いが、それも襲ったり襲われたりの道中である。ずっとそんな感じ。確かに今までに見たことがない西部劇だ。
ジャック・オーディアール(1952~)は、「ディーパンの闘い」(2015)でカンヌ映画祭パルムドールを獲得した。今回の「ゴールデン・リバー」はそれ以来の監督作で、ヴェネツィア映画祭銀獅子賞、フランスのセザール賞で監督賞など4部門で受賞した。それ以前にも「真夜中のピアニスト」(2005)、「預言者」(2009、カンヌ映画祭グランプリ)などがある。日本ではその重厚な描写がいつも敬遠されているかもしれない。この映画も俳優の名演が見事だが、ちょっと長くて暗いかなと思う。でも力作だから、一応紹介して記憶に留めておく。
原作が多分重厚なんだろうが、この映画もじっくり描いて進行が遅い。こんな話だったかと最後の方まで判らない。西部劇と言っても、見るものにガンファイトのカタルシスをもたらすエンタメ作品ではない。画面もずっと暗いし、冒頭からして真夜中の銃撃戦。お互いに全然判らない中で撃ち合っている。西部劇(ウェスタン)は世界中で「西部劇風」の娯楽作が作られた。でも「アメリカ西部」を舞台にすることが西部劇と呼ばれる条件だろう。この映画はフランスの監督がスペインでロケした映画だが、場所は「オレゴン準州」という設定。俳優もアメリカ人を使った英語映画で西部劇になる。
シスターズ兄弟はオレゴン準州の提督(と字幕にある)に雇われて、ヒットマンをしている。相当に優秀で相手が多くても皆殺しにしている。チャーリー(ホアキン・フェニックス)が主導的なんだけど弟。兄のイーライ(ジョン・C・ライリー=映画化権を獲得して製作を兼ねている)は、早くやめて故郷に帰りたがっているが弟の面倒を見ている。兄弟が殺し屋で、そのために先行して標的を探す役がジョン・モリス(ジェイク・ギレンホール)。その標的はハーマン・カーミット・ワーム(リス・アーメット)で、モリスはうまいことハーマンに近づき捕えてしまう。
(シスターズ・ブラザーズの二人)
それで終わりなら映画にならない。このハーマンという男は、実は金を見つける化学物質の化学式を見つけたというのである。追われているのは実はその化学式が欲しいからだという。そして自分の最終目的は、金を見つけることではなく、その儲けでダラスに理想的な共同体を作るんだという。その話にモリスも共感して、二人は仲間になってしまった。シスターズ兄弟もそれを知り、オレゴンからカリフォルニアで追いかけてゆく。途中で様々なジャマが入るけど、もう川で金探しを始めている二人を見つける。そこを別のグループに襲撃され、結局4人で共闘することになった。
そして川に「とある薬品」を流し出すと…、ホントかよと思うけど、金鉱石がピカピカ光り出すではないか。ここが凄いと言えば凄いけど、こんな物質があるんだろうか。ないでしょ、金に反応するなんて。むしろ黄鉄鉱かなんかに反応しているんだったら判らないでもないが。そしてチャーリーはこの光輝く川を見て、欲望に駆られてしまう。そこから崩壊への道は一直線。アレレと思う間に全てが終わってしまう。この成り行きの元を作ったオレゴン準州提督も襲うつもりで、行ってみたら死んだところだった。何か全ては夢で、全てはムダだったのか。馬を駆けて草原や山を行く美しいシーンが多いが、それも襲ったり襲われたりの道中である。ずっとそんな感じ。確かに今までに見たことがない西部劇だ。
ジャック・オーディアール(1952~)は、「ディーパンの闘い」(2015)でカンヌ映画祭パルムドールを獲得した。今回の「ゴールデン・リバー」はそれ以来の監督作で、ヴェネツィア映画祭銀獅子賞、フランスのセザール賞で監督賞など4部門で受賞した。それ以前にも「真夜中のピアニスト」(2005)、「預言者」(2009、カンヌ映画祭グランプリ)などがある。日本ではその重厚な描写がいつも敬遠されているかもしれない。この映画も俳優の名演が見事だが、ちょっと長くて暗いかなと思う。でも力作だから、一応紹介して記憶に留めておく。