2019年7月21日投開票の参議院選挙。投票率は48.8%ほどだった。今回は2013年に当選した議員の改選期で、6年前は第2次安倍政権発足から半年ぐらいで自民党が非常に強かった。(というか、前年末までの政権党、民主党が非常に弱体化していた。)今回は自民党に多少取りこぼしがあるだろうから、僕はもともと「改憲政党3分の2」は非常に難しいと思っていた。実際そのようになり、自民党は公明党と連立した与党としては安定多数を維持したが、自民党単独では過半数を割り込んだ。
数を確認しておくと、参議院の総定数は245議席。今年の選挙から変わったが、ちょくちょく変わるので覚えられない。(2022年参院選後には、248議席となる。)2016年当選の非改選議員は自民党が56人、公明党が14人である。2019年の当選者は、自民が57人、公明が13人。合計すると、自民党が112議席、公明党が27議席となる。今回改選の自民党議員は66人だったから、9人減らした。過半数は123議席だから、自民党は単独過半数を失った。(前回まで議員定数は242人。自民はギリギリ過半数。)
今回は国政選挙の投票率としては史上2番目の低さだった。都道府県別に見てみると、野党統一候補が勝利した山形県が唯一60%に達している。同じく野党候補が勝った岩手、秋田、新潟も55%を超している。高投票率が野党に有利というより、どこも激戦と伝えられたことが投票意欲を高めたのだろう。一方、自民党が好調を維持した西日本に低調が目立つ。中国・四国・九州/沖縄は島根、愛媛、大分を除き軒並み5割を割った。このうち愛媛、大分は野党が勝利している。西日本で投票率が低かったことが、自民党の比例票が大幅に減る原因となったと思われる。
(参院選投票率の推移)
今回の低投票率には様々な要因があるだろう。そもそも参院選は衆院選より投票率が低い。政権選択にならないし、選挙区は都道府県単位、比例代表は全国だから、広すぎて選挙が盛り上がりにくい。与党が好調なときは、与野党の差がはっきりし過ぎて選挙の意味を感じにくい。知事選なんかかで「現職知事対共産党候補」の場合など、結果が見えてるから投票率が下がるのと同じである。西日本の低投票率の大きな理由だろう。やはり「激戦報道」が一番投票率を高めるのである。そのためには野党側の選挙協力体制、魅力ある候補者の擁立、明確な争点化などが必要だ。
低投票率には「偶然的要因」と「必然的要因」がある。今回はもともと盛り上がりに欠けると思われていて、僕も5割を割るのは確実だと思っていた。今回は「天候的要因」も大きい。選挙当日に北九州は大雨で避難勧告も出た。北九州の低投票率の最大要因だと思う。全国的に梅雨寒が長く続き、テレビニュースのトップは選挙よりも天気の話が多かった。暑いのも嫌だけど、雨だとビラも受け取ってもらえず、演説会にも人が少ない。全体的に運動の広がりが弱くなるという話である。
一方、近年の選挙は良くても6割半ばぐらいしか行かない。もともと3割以上の人は選挙に行かない。「自分の意思で行かない」人もいるだろうけど、「行きたいけど行きにくい」人もいる。「全然関心が無い」人もいるだろうし、「面白ければ行ってもいいけど、今回は意義を感じられなかった」人もいるだろう。選挙を「棄権する自由」はあるだろうか。与党も支持しないが、野党も支持できない。政党は皆信用できないというのは、かなり正しいかもしれない。そもそも議会政治そのものを支持しないという立場もある。僕は「主義主張として棄権する権利」はあると思う。でもそういう人は多くても全体の5%程度だろう。
一方、「行きたいけれど行けない」という「投票弱者」も多くなっているんじゃないか。高齢になって、あるいは過疎化によって、投票所まで行くのが大変な人。あるいは、軽度の障害により、「字が書きにくい」「字が読みにくい」「学習障害で字が認識しにくい」「外国出身で漢字が苦手」などなど。後者に関しては、郵便投票の拡大、投票の自書式の変更(候補者の名前や写真にチェックする)などが考えられる。一方、前者の対策として、「投票所の方から有権者に近づく」方策を考えて欲しいと思う。スマホからの投票などもあるが、高齢者、過疎化対策としては、むしろ「移動期日前投票車」が役立つと思う。限界集落などを車で回って行く投票所である。マジメに検討して欲しい。
そうは言っても、選挙情報が無くては誰に入れたらいいか判らない。新聞を読めばいい、インターネットで調べろと言って済む問題じゃない。あるいは、誰か投票を頼んでくる知人がいるだろうと言っても、社会が変わってしまった。会社や業界団体、労働組合などから頼まれるには、それなりの社会関係が必要である。世の中、自分の主義主張がはっきりしている人ばかりではない。「社会の中での人間関係」が薄れている現代では、政治に対する問題意識そのものが育たない。仕事が忙しいとまあいいかになってしまう。そういう人が受け身でも見る可能性があるメディアは「テレビ」しかない。
そして特に今回はテレビの選挙報道が少なすぎた。面白い選挙区はいっぱいあった。事実上「イージスアショア」の県民投票になった秋田県、「忖度発言」で辞任した元国交副大臣と女性弁護士対決の新潟県、民放女性アナ対有名政治家一家の三代目対決の宮城県…。ワイドショー向けの話題選挙区はいっぱいあったと思うが、報道すれば自民に不利になる選挙区が多い。「公平に報道せよ」とうるさくチェックして、あとあとでしっぺ返しをしてくる(と思ってつい心配してしまう)安倍政権である。これではテレビが報じなくなるわけだ。「報道の自由」が奪われた結果としての、有権者の情報不足。それが「投票率の低下」になっている。
数を確認しておくと、参議院の総定数は245議席。今年の選挙から変わったが、ちょくちょく変わるので覚えられない。(2022年参院選後には、248議席となる。)2016年当選の非改選議員は自民党が56人、公明党が14人である。2019年の当選者は、自民が57人、公明が13人。合計すると、自民党が112議席、公明党が27議席となる。今回改選の自民党議員は66人だったから、9人減らした。過半数は123議席だから、自民党は単独過半数を失った。(前回まで議員定数は242人。自民はギリギリ過半数。)
今回は国政選挙の投票率としては史上2番目の低さだった。都道府県別に見てみると、野党統一候補が勝利した山形県が唯一60%に達している。同じく野党候補が勝った岩手、秋田、新潟も55%を超している。高投票率が野党に有利というより、どこも激戦と伝えられたことが投票意欲を高めたのだろう。一方、自民党が好調を維持した西日本に低調が目立つ。中国・四国・九州/沖縄は島根、愛媛、大分を除き軒並み5割を割った。このうち愛媛、大分は野党が勝利している。西日本で投票率が低かったことが、自民党の比例票が大幅に減る原因となったと思われる。
(参院選投票率の推移)
今回の低投票率には様々な要因があるだろう。そもそも参院選は衆院選より投票率が低い。政権選択にならないし、選挙区は都道府県単位、比例代表は全国だから、広すぎて選挙が盛り上がりにくい。与党が好調なときは、与野党の差がはっきりし過ぎて選挙の意味を感じにくい。知事選なんかかで「現職知事対共産党候補」の場合など、結果が見えてるから投票率が下がるのと同じである。西日本の低投票率の大きな理由だろう。やはり「激戦報道」が一番投票率を高めるのである。そのためには野党側の選挙協力体制、魅力ある候補者の擁立、明確な争点化などが必要だ。
低投票率には「偶然的要因」と「必然的要因」がある。今回はもともと盛り上がりに欠けると思われていて、僕も5割を割るのは確実だと思っていた。今回は「天候的要因」も大きい。選挙当日に北九州は大雨で避難勧告も出た。北九州の低投票率の最大要因だと思う。全国的に梅雨寒が長く続き、テレビニュースのトップは選挙よりも天気の話が多かった。暑いのも嫌だけど、雨だとビラも受け取ってもらえず、演説会にも人が少ない。全体的に運動の広がりが弱くなるという話である。
一方、近年の選挙は良くても6割半ばぐらいしか行かない。もともと3割以上の人は選挙に行かない。「自分の意思で行かない」人もいるだろうけど、「行きたいけど行きにくい」人もいる。「全然関心が無い」人もいるだろうし、「面白ければ行ってもいいけど、今回は意義を感じられなかった」人もいるだろう。選挙を「棄権する自由」はあるだろうか。与党も支持しないが、野党も支持できない。政党は皆信用できないというのは、かなり正しいかもしれない。そもそも議会政治そのものを支持しないという立場もある。僕は「主義主張として棄権する権利」はあると思う。でもそういう人は多くても全体の5%程度だろう。
一方、「行きたいけれど行けない」という「投票弱者」も多くなっているんじゃないか。高齢になって、あるいは過疎化によって、投票所まで行くのが大変な人。あるいは、軽度の障害により、「字が書きにくい」「字が読みにくい」「学習障害で字が認識しにくい」「外国出身で漢字が苦手」などなど。後者に関しては、郵便投票の拡大、投票の自書式の変更(候補者の名前や写真にチェックする)などが考えられる。一方、前者の対策として、「投票所の方から有権者に近づく」方策を考えて欲しいと思う。スマホからの投票などもあるが、高齢者、過疎化対策としては、むしろ「移動期日前投票車」が役立つと思う。限界集落などを車で回って行く投票所である。マジメに検討して欲しい。
そうは言っても、選挙情報が無くては誰に入れたらいいか判らない。新聞を読めばいい、インターネットで調べろと言って済む問題じゃない。あるいは、誰か投票を頼んでくる知人がいるだろうと言っても、社会が変わってしまった。会社や業界団体、労働組合などから頼まれるには、それなりの社会関係が必要である。世の中、自分の主義主張がはっきりしている人ばかりではない。「社会の中での人間関係」が薄れている現代では、政治に対する問題意識そのものが育たない。仕事が忙しいとまあいいかになってしまう。そういう人が受け身でも見る可能性があるメディアは「テレビ」しかない。
そして特に今回はテレビの選挙報道が少なすぎた。面白い選挙区はいっぱいあった。事実上「イージスアショア」の県民投票になった秋田県、「忖度発言」で辞任した元国交副大臣と女性弁護士対決の新潟県、民放女性アナ対有名政治家一家の三代目対決の宮城県…。ワイドショー向けの話題選挙区はいっぱいあったと思うが、報道すれば自民に不利になる選挙区が多い。「公平に報道せよ」とうるさくチェックして、あとあとでしっぺ返しをしてくる(と思ってつい心配してしまう)安倍政権である。これではテレビが報じなくなるわけだ。「報道の自由」が奪われた結果としての、有権者の情報不足。それが「投票率の低下」になっている。