星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

連想ついでに、、、

2006-01-18 | 文学にまつわるあれこれ(漱石と猫の篭)
   このマラルメと云う人にも多くの若い崇拝者がありました。その人達はよく
  彼の家に集まって、彼の談話に耳を傾ける宵を更(ふか)したのですが、
  如何に多くの人が押し懸けても、彼の坐るべき場所は必ず暖炉の傍で、彼の
  腰を卸すのは必ず一箇の揺椅(ゆりいす)と極っていました。(中略)
  ところがある晩新しい客が来ました。たしか英吉利のシモンズだったという話
  ですが、、(略)マラルメの坐るべきかの特別の椅子へ腰を掛けてしまいまし
  た。マラルメは不安になりました。何時ものように話に実が入りませんでした。
  一座は白けました。
  「何という窮屈な事だろう」
   私はマラルメの話をした後で、こういう一句の断案を下しました。そうして
  兄さんに向って、「君の窮屈な程度はマラルメよりも烈しい」と云いました。


              (夏目漱石 『行人』三十八より)

 ***

「死ぬか、気が違うか、…」
行く途の選択についてこう悩んだ〈兄さん〉、、、

漱石には、、『硝子戸の中』という作品がある。。
彼は、、、そこで、しずかに微笑している。