星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

ロンドン漱石記念館に、

2010-08-20 | 文学にまつわるあれこれ(漱石と猫の篭)
漱石の銅像ができた、、と 今朝の新聞に載っていましたね。(asahi.com>>) 110年前に英国留学をしていた、 〈イケメン漱石〉の像、、だそうです(笑)

、、で、 その話はちょっと置いて、、

 ***



そもそもは、、『怪奇幻想の文学〈6〉啓示と奇蹟』 (新人物往来社・1979年) という本を図書館から借り、、 これは短編小説集なのですが、 この中の面白い作品のことをちょっと書こうかな、、 と 思っていて、、、 では書籍の情報をリンクしよう、と Amazonを見てみたらば、、、

古書にとんでもないお値段がついていた。。。(うっわぁ、、驚!)

『怪奇幻想の文学〈6〉啓示と奇蹟』 (Amazon.co.jp) 定価1200円

30年以上も前の本ではありますが、、、 これでは誰も読めないぢやないか。。。(泣) ちなみに、 この本の解説をしているのは、 故英文学者の由良君美先生なのですが、、 由良さんの本をためしにあたってみた。。。

『椿説泰西浪曼派文学談義 増補版』 (青土社・1983年) Amazon.com 定価1800円

由良さんといえば、 英文学の中でも 幻想・怪奇文学の紹介者として、、 仏文学の澁澤龍彦さん、独文学の種村季弘さん、と並ぶ博覧強記の方。 澁澤本は、 今でも文庫などで若い人もたくさん読むと思うけれど、、 英文学にはあまりに絶版が多すぎる。。

、、と 愚痴っても仕方ないので、、 古書に何万円もお金の掛けられない私たち、 もっと公共図書館を利用しましょう! 絶版書だって立派に書庫に眠ってます。。 (ほんとに眠ってるのが 哀しい、、) 近隣の図書館に無くても、 国会図書館や都立図書館からだって取り寄せられますもの。

さて、 『椿説泰西浪曼派文学談義 増補版』の目次は
 
類比の森の殺人
夢のフーガ
衆魔と夢魔
四元素詩学
自然状態の神話
サスケハナ計画
ランターズ談義
ベーメとブレイク
啓示とユートピア
ゴヤとワーズワス
幻想の地下水脈
ヘルマフロディトスの詩学
ミミズク舌代
悪夢の画家
イギリス絵画漫歩
伝奇と狂気
ゴシック風土
ヴィクトリア時代の夜
ロマン派音楽談義

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由良さんの本はとても手に入りにくいので、、 その直系のお弟子さんである 高山宏先生(wikiがあった>>)の 「超」面白い 「超」英文学の本を。 これなら今でも入手できるでしょ。。。

文学が、 科学や 産業技術や 美術や 交通や 娯楽etc と同じ地平のものである、、という、 本当に当り前と言えばあたりまえの、、 でも ほとんどの学校の先生は誰も教えてくれなかった事を 目からウロコ状態にさせてくれる講義です。

、、で、 冒頭の話に繋がりますが、 110年前に漱石がロンドンへ留学して、 地下鉄も、 劇場も、 美術館も、 自転車も、 公害も、、 明治の日本と違うなにもかもに吃驚して、、 これでは文学書ばかり読んでいたって ブンガクはわからん! と思い知った、、という その事とおんなじ話なのです。  

『奇想天外・英文学講義―シェイクスピアから「ホームズ」へ』  (講談社選書メチエ・2000年)

目次
第1章 シェイクスピア・リヴァイヴァル
  アンビギュイティ/エリザベス朝と一九二〇年と一九六〇年代は似ている/表象と近代
第2章 マニエリスム - 驚異と断裂の美学
  薔薇十字団/絵と文字の関係
第3章 「ファクト」と百科 - ロビンソン・クルーソーのリアリズム
  だれも知らない王立協会/断面図とアルファベット順
第4章 蛇行と脱線 - ピクチャレクスと見ることの快
  「見る」快楽/造園術
第5章 「卓」越するメディア - 博物学と観相術
  手紙と日記と個室/テーブルと博物学/観相術の流行/デパートの話をばちょっと
第6章 「こころ」のマジック世紀末 - 推理王ホームズとオカルト
  レンズとリアリズム/オカルティズムへ
第7章 子供部屋の怪物たち - ロマン派と見世物
  幻視者キャロル/怪物学とグロテスク
エピローグ - 光のパラダイム

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上記の本を、 主に その時代の〈視覚〉の発明・発見と文学の関係 を中心に詳説したのがこちら。 話は17世紀から19世紀末に亙ります。

『目の中の劇場―アリス狩り II 』 (青土社・1995年) 定価3600円

目次
星のない劇場
王権神綬のドラマトゥルギー -遠近法の政治学
目の中の劇場 -ゴシック的視覚の観念史
庭の畸型学 -凸面鏡の中の〈近代〉の自画像
迷宮の言語都市 -アンチ・ピクチュアレスクの一形式
光学の都の反光学 -ディケンズとザ・ピクチュアレスク
〈視〉に淫す -ヘンリー・ジェイムズの〈窓〉
死の資本主義 -マガザン・ド・デーユ周辺
悪魔のルナパーク

、、貴重な図版や 参考文献の紹介もどっさり。 数ある高山センセイの本の中でも 一番お世話になった本です。 、、とは言え、 こちらも入手困難ですから、 文庫本で出たこちら↓が、 ほぼ内容的に重なっているのではないかと思われます。(私は未読ですが)

『近代文化史入門 超英文学講義 (講談社学術文庫)

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夏目漱石が ウォルポールやベックフォード、 アラン・ポーといった幻想怪奇小説を結構好きだったというのは、 今ではわりと知られていますし、 上記『目の中の~』の最後に 〈ルナパーク〉 とありますが、 〈遊園地〉、、 つまり 劇場や、 水族館や、 博覧会みたいなものも含めた意味での娯楽施設で余暇を楽しむことに、 19世紀末のロンドン市民は夢中になったわけですが、 そういうのも漱石の 『虞美人草』に出てきますよね。

、、、 というわけで、 最終的には 国民的作家 漱石先生に戻って来ました。 目からウロコの英文学史に触れたら、 漱石作品を読みなおしてみては、、? 

きっと 目からウロコ、、だと思います。