くたびれた時代に生きる、くたびれた心よ
善悪の網を逃れて、こっちへおいで
笑ってごらん、もう一度、薄墨色の薄明の中で
嘆いてごらん、もう一度、朝明けの露にぬれながら
(「薄明の中へ」 第1節)
谷間や丘をさすらううちに
時が流れて俺は老いたが
いつの日か必ず娘を見つけ
くちづけをして手を取るつもりだ
丈高く、木漏れ日浴びた草を踏み分け
ふたりして、時の終わりまで歩いていこう
銀色の月の林檎を摘み取りながら
金色の太陽の林檎を摘み取りながら
(「さすらうエインガスの歌」 最終節)
詩の引用は、『赤毛のハンラハンと葦間の風』 W・B・イェイツ著
栩木伸明 訳/平凡社 2015年 より