星のひとかけ

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春が生まれる日 Là Fhèill Brìghde:『香りの百花譜』熊井明子

2022-02-01 | 文学にまつわるあれこれ(林檎の小道)
2月になりました。 

今朝 なんとなく やさしい気持ちになる本を読みたくて、、 ポプリ研究家でエッセイストの熊井明子さんの懐かしいご本を開きました。 古い本なのでカバーがどこかへいってしまいましたが、 花の美しいイラストが沢山あしらわれた素敵な本です。 
花の香りと、 さまざまな文学作品に登場する花のエピソードなど、 それから 熊井さんが育った信州松本市の思い出なども綴られていて、 こんな風に ご自身の研究された知識を季節に沿って いろんな文学と共にやさしく語れるのって なんて素晴らしいことでしょう。。 








 アイルランドの古い伝説では、タンポポは二月生まれの聖ブリジッドの花で、人々は二月二日を聖ブリジッドの日として、春を迎える祝いをしたらしい。
   (『香りの百花譜』 熊井明子著 主婦の友社 1991年
    現在は『新編 香りの百花譜 (熊井明子コレクション 1) 』千早書房 2010年)
 
きょうはアイルランドの女性聖人 聖ブリジッドの日なのだそうです。 貧しい人に小麦や乳を惜しみなく与え、 しまいには宝石のついた父の剣まで与えてしまったというキルデアのブリギッド、 父の怒りで修道院にやられたのちは、 アイルランド各地に修道院をいくつも建て、 そうしたことからアイルランドで女性唯一の守護聖人に加えられたそうです。

キルデアのブリギッド>>wiki

上記の熊井さんのエッセイにも書かれている《春を迎える祝い》 というのが 「インボルク」だそうで、 2月1日あるいは 2日に 聖ブリギッドをお祝いするそうです。 この「インボルク」の日からアイルランドでは春が始まる、 命が生まれ始める、と考えられているそうで、 もうすぐ訪れる日本の節分・立春と少し似ていますね。


インボルク>>wiki

「インボルク」のウィキにも書かれていますが、 聖ブリギッドは「太陽の光に加え、健康(医療)と鍛冶をつかさどり、芸術や収穫と家畜、自然にも関わっている」 とのことで、 「ヒツジが子を産む季節や乳に大きな役割を担っており、子ヒツジが生まれるとインボルクが近いと言われた」そうです。

英文の検索をしていたところ、 スコットランドの伝承では 「聖ブリギッドはたんぽぽのミルクで子羊を育てた」とあり、 それで たんぽぽと羊とが聖ブリギッドの象徴になったのですね。

 ***

聖ブリギッドを祝う「インボルク」には まだ続きがあって、 これもいくつかのサイトや本の記述で見たのですが、 聖ブリギッドに捧げる聖樹が 「ナナカマド」なのだそうです。

なるほど・・・!

昨年の暮れ、 「クイックン・ツリー」と呼ばれているナナカマドのことを書きましたね、 クレア・キーガン著の「クイックン・ツリーの夜」という短編小説に書かれていたこと (>>12月は雨とともに…) あの短編もアイルランドのお話でした。

七竈(ななかまど)= 「七回かまどで燃やしても燃えない」というくらい燃えにくい木、、 と日本では考えられていますが、 実際はよく燃えるそうで、 クレア・キーガンの小説では「ナナカマドの火にかなうものはないからな」と書かれていました。 その、とてもよく燃えて身体を暖めてくれるナナカマドの木が、 豊穣や光をつかさどる春の聖人ブリギッドに捧げられているのですね。 なるほど。。

そして 「子ヒツジが生まれるとインボルクが近い」という事も、 ナナカマドが《胎動》を意味する「クイックン・ツリー」と呼ばれていることと関係があるというわけです、、 いろいろつながっているんですね。










きょうは 春が生まれる日…


光が生まれる日…


命が生まれる日…



窓から差し込む朝陽も 日に日に力づよく 暖かくなってきましたよ。

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