prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

ビューティ・パーラー(1)

2005年09月30日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ 登場人物

笈出健夫(24) … 修行中の美容師・独立を画策中
畠山晴海(32)… 笈出の師匠の人気美容師
卯川つばさ(26)… 人気タレント・本格的俳優志望・畠山の顧客
和田正子(53)… 羽島が所属している事務所の社長
秋月美幸(22)… 羽島の熱狂的なファン
小牧奈美(31)… 有閑マダム
野村久英(36) … 羽島が嫌っているのに関係が噂されている男
犬山… 芸能レポーター
鮫島… カメラマン
取材陣たち
試案・このうち卯川と秋月は同じ俳優が演じる。

○ 美容室“ノア”(夜)
以下の情景にタイトルが被る。
住宅地近くのちょっと人通りが途切れた閑静な一角。
だがここだけは女性たちがしきりと出入りしていて、いかにも華やいだ雰囲気だ。
瀟洒な外装、ぐるりはマジックミラーになっていて、出てきた客たちは改めて自分の姿を写してヘアメイクの出来栄えを確認したりしている。
外壁の一部がたとえば縦4横3に積まれたブラウン管のディスプレイになっていて、そこにテレビに出て作業中の美容師の姿(畠山晴海・30)がずらりと並べて写されている。
店の中では、実物の畠山が忙しく助手たちを動かしながら立ち働いている。
畠山、凝った金色の細工を施した取っ手がついたハサミを操っている。
助手の中でも特にまめまめしく働く笈出健夫(26)。
笈出、自分の仕事を畠山に見てもらい、OKをもらう。
すでに店の一角を任されているといった感じだ。
てんてこまいの情景が続いて…   ×     ×
閉店後、最後まで居残って後かたづけをしている笈出。
畠山「(帰り支度をしながら)おい、あした出てこられるか」
笈出「はい」
畠山「備品の点検しておいてくれないか。このところ忙しすぎて目が行き届かなくなってるから」
笈出「先生は一日お台場ですか」
畠山「多分な。カメラの前と後ろを往復させられちゃ、時間とられていけない。定休日つぶされるんじゃたまらないよ」
と、言いながらまんざらでもない様子。
笈出「お帰りは」
畠山「こっちには寄らない。じゃ」
と、表から帰っていく。
笈出、ディスプレイのテレビを消し、表の戸締まりをして、カーテンを閉める。
各種の点検を終え、電気を消して、奥に向かう。

○ 同・奥の更衣室
で着替え、従業員用の裏口から出ていき、戸締まりして去る笈出。
店と更衣室の間は、カーテンで仕切られて見通しはきかない。
以上で、タイトル終わる。

○ 表(昼前)
店の表戸を覆うマジックミラーは、昼間は外が明るいので中が半ば透けて見えるが、カーテンが下がっているので、中を見ることはできない。
そのカーテンが、舞台の幕を開けるように開かれる。
開けたのは、笈出だ。
店の中にも外にも他に人影はない。
それからガラス戸を開け、店の外もきれいに箒で掃く。
手慣れた、しかし手抜きのない動作。
外の掃除を終えた笈出について、カメラも店の中に入る。

○ 店
こちらも掃除する笈出。
壁にはファッション雑誌がずらりと並べられ、その過半で表紙は同じモデルだ。
写真の傍らに踊る“卯川つばさ”の文字。
笈出、掃除に続いて備品の点検も済ませる。
作業が一段落した笈出がふっと上の方の壁を見上げると、何を思ったのか奥に引っ込む。
見上げられた壁には、各種のコンクールの賞状が並び、畠山の大判の写真も額に入れて飾られている。
さらにその横に畠山に世話してもらっている卯川とツーショットで写っている写真もある。
奥から戻ってきた笈出、手にした自分の写真をその畠山の部分に隠すようにかぶせる。
畠山に成り変わって笈出が卯川と並んでいるような図になる。
さらに紙筒から出してきた賞状を、畠山の賞状の上にかぶせる。
笈出「(静かに、しかし決然とした調子で)今に見てろ」
そしてまた自分の写真と賞状をしまう。
さらに、ビデオも持ってきて、外のディスプレイ用のビデオデッキからテープをとりだし、自分のに差し替える。

○ 表
に出て、人通りがないのを確かめてからリモコンで再生する。
白じらとした昼の光の中に、卯川を担当している笈出の映像が並ぶ。
店で担当しているところを家庭用ホームビデオで撮ったものらしく、映像の質はぱっとしない。
笈出「(首を傾げ)これだけじゃ、やっぱり見劣りするな」
遠くから誰かやってくる気配がするので、笈出はビデオを止め、店内に戻る。

○ 店
笈出、いったんガラス戸を閉め、カーテンを閉める。
そして、店内の鏡に写った自分の姿を食い入るようにじっと見る。
カメラ、笈出とともに鏡の中をじっとのぞき込む。
そして、ゆっくりと接近し、ついには鏡面を突き抜け、その向こう側に行ってしまう。
○ 鏡の中の世界(左右逆)
そこには、見る者の願望や本音がある。
華やかな店内で、助手たちを率いてさっそうと自信に満ちて卯川の世話をしている笈出。
押し掛けてきている女性客たち。
外のディスプレイに写し出されている笈出の姿。
華やかさでは畠山のそれを上回って、しかしセンスは違う世界。
それに酔っている笈出。
突然、幻想がチャイムの音でぶち切られる。

○ 店
ガラス戸の外のチャイムが鳴らされている。
笈出が出ていくと、外に雑誌記者(犬山)が立っている。
犬山「すみません、GOSHIP WEEKLYの犬山といいますが、卯川つばささんいますか。よく来てるでしょ」
笈出「(木で鼻をくくったように)今日は定休日です」
犬山「じゃあ、畠山さんいますか」
笈出「今、留守です」
犬山「どこにいますか」
笈出「申せません」
犬山「ふーん…(不満そうに)失礼しました」
と、ぷいと行ってしまう。
笈出「なんだ、あいつ」
と、奥に戻り、更衣室に入る。

○ 更衣室
自分の賞状と写真をロッカーにしまう。
裏口がノックされる。
笈出「なんだ?」
と、出ると、別の記者(鮫島)が立っている。
鮫島「すみません、○○WEEKLYの鮫島といいますが、卯川つばささんいますか」
笈出「卯川さん?」
鮫島「よく来てるでしょ」
笈出「(少しうんざりして)今日は定休日です」
鮫島「ここの看板みたいな人じゃないですか」
笈出「看板って…」
鮫島「卯川さん人気に乗らなかったらここも人気出なかったでしょ」
笈出「(むっとして)とにかく、いません」
鮫島「じゃあ、畠山さんいますか」
笈出「今、留守です」
鮫島「どこにいますか」
笈出「申せません」
鮫島「ふーん…一緒じゃないんですか」
笈出「そうとは限りません」
鮫島「何か店の中以外のおつきあいとかはありませんか。畠山さんと卯川さん」
笈出「存じません。あなたがた、何調べてるんですか」
鮫島「(怪訝に)あなたがた?他に誰かここに来たんですか」
笈出「(怪訝に)来ましたよ。知らないんですか」
鮫島「(舌うちする)ちっ…、失礼」
さっさと行ってしまう。
笈出「本当に失礼だ」
戸をぴしゃりと閉める。

○ 店
に出てくる笈出。
と、表の戸が外から勝手に開けられたのであわてて駆け寄る。
笈出「すみません、定休日です」
と、軽薄な感じの男(野村久英・32)が入りかけてくるのを押しとどめる。
野村「すみません、卯川つばささんいますか」
笈出「(うんざりして)いませんっ」
野村「あの、会いたいんです」
笈出「ここにいても会えませんよ」
野村「(聞いてない)あの、僕、彼女を愛してるんです。
心から愛してるんです。
だから、会わせて下さい」
笈出「(警戒して)あなた、ストーカーみたいなこと言いますね」
野村「ストーカー? (むきになって)とんでもないっ。僕は彼女につきまとったりしてません。携帯の番号だって知らないし、今の居場所も知らないんだから。あ、僕、野村といいます。野村久英」
笈出「それって、単に相手にされてないだけじゃないんですか」
野村「とんでもないっ、彼女に聞いてもらえればわかります。一緒に食事したレストランの名前だって、全部言えます。
先月の20日には“カモッラ”で、27日は“ラ・ストゥアーダ”で、今月10日は“宇の丸”で…」
笈出「(まだ続けそうなのを抑えて)アリバイを聞いてるんじゃありませんよ」
野村「とにかく、本当に愛してるんです。だから彼女の意志を尊重して、携帯の番号も強いては聞かないでいるんだから。(妙に胸を張って)紳士でしょう」
笈出「とにかく、いないといったらいないんです。邪魔になるから、帰って下さい」
と、強引に押し出す。
未練たらしいが、やがて去る野村。
笈出「(首を傾げ)どうなってるんだ」
ふと、悪い予感がして、更衣室に向かう。

○ 更衣室
裏口の前に来る笈出。
と、それを待っていたように戸がノックされる。
笈出「(がくっと来て)悪い予感というのは、どうして当たるのかな」
と、ドアを開けると、強引に男が押し入ってくる。
笈出「何…」
と押し返しかけて、相手が隠している顔をのぞき込み、ふっと力を抜き侵入を許す。
帽子をかぶり、サングラスをかけ、まるで人相がわからなくしている男。
笈出、しかし誰だかわかった様子で急いで裏口に鍵をかける。
それから男を置いて、店に出る。

「ビューティ・パーラー」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



「空 -SORA-」 劇団ZAPPA VOL.8

2005年09月30日 | Weblog
勝海舟が西郷隆盛とかけあって江戸の無血開城に踏み切った史実と、海舟の父・小吉の破天荒な生活とを同じ舞台面で交錯させながら描く。同じ役者が、メイク一つ変えずに「昔、早死にした息子」と「今の、そっくりな青年」とを行き来したりするのは、芝居でなければできない表現。

題名通り、無血開城後に海舟が追手から逃れて新門辰五郎(!)のもとに飛びたつ場面と、小吉に救われた「空」(そら)という少女を乗せて手製の飛行機の製作者が飛び立つ場面と、空を飛ぶ場面が繰り返しクライマックスになっている。これが舞台の上にも関わらず、外された障子が飛行機の羽に見立てられるなど、ちゃんと空を飛ぶ(というより、精神が飛翔する)表現になっているのは、お見事。

作・演出の澤田正俊が小吉役もつとめている。ずいぶん図体がでかくて、立回りなど迫力あり。ふところ手しながら鬚をぼりぼり掻いているあたり、三船敏郎ばりの図。
空役の三島冨美子は思いきり小柄で、辰五郎の日花一善、若頭の春山壱樹など、印象的な容貌の役者、多し。
着物の着付けや、メイクや、立回りなど、時代劇らしくきちんとやっている。
侍が百姓を一方的に虐げているという階級史観(?)は、いささか古めかしい感じはするが。




思わぬこと

2005年09月30日 | Weblog
ガスコンロの点火用の乾電池がバカにゆるくてちゃんとはまらず、アルミ箔を細かく折り畳んで間にはさんで使っていたのだが、あまりぽろぽろ落ちるのでコンロメーカーの人に来てもらったら、なんと乾電池の方が寸詰まりだった。
100円ショップで買った大阪のメーカーでメイド・イン・チャイナの製品だが、まさかサイズが違っているとは想像の外。