prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「エミリー・ローズ」

2006年04月04日 | 映画
これが新興宗教家が「悪魔」が少女に憑いていると判断し、そのため正規の医療が行われずに死亡したケースだとしたらどうだろう。誰もこれが犯罪であることを疑わないだろう。それがキリスト教だとなぜ許されるのか。

少女に悪魔が取り憑いた症状は、「エクソシスト」と見かけ上だぶる部分は多いが、少女自身以外から力が加わったり、第三者に悪魔の姿が見えたりすることはない。ほとんど医学的に説明できる症状で、できない部分も単なる情報不足で、悪魔のしわざだと考えなくては説明がつかない部分など、ない。
それなのに、弁護士が妙に悪魔のしわざを信じてしまうと、実質的に無罪の判決が出てしまうのだから、ちょっと待ってくれと思う。悪魔がどうこういうより、現実的にはコワいではないか。

そういう怖さを、映画の作り手がどの程度意識しているのかも、疑問。エミリーが本当に聖別されたのだと信じる人間を煽るなど、許されないことだ。下手すると、選民主義に結びつきかねない性格のことではないか。
この映画の宣伝文句「悪魔の存在を認めた裁判」という表現も許しがたい。判決では、そんなものは認めていない。オウムを生んだテレビのオカルト番組と同じセンス
で、そういう無責任なセンセーショナリズムが何を生んだのか、忘れたのか。

あと、なまじ現実的な線で描写をまとめているため、怖くしようとしてもあまり手がなくて黒猫だのヘビだのを出してくるのは、いささか苦しい。

結局、信仰が善意であっても、というより善意であるからこそ人を殺すこともあるのだ、というところにまで踏み込んでいないから、すべてが生ぬるくなっている。
いかにもなホラーではなく、マジメに作っているのはわかるが、だからといってテーマが深くなったわけではない。
(☆☆★★★)



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