李連杰としては「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ以来の主演の中国ナショナリズム路線。ひさびさの辮髪姿。
あれも実在の人物・黄飛鴻が主人公だったが、清朝末期、列強諸国に侵略されてコケにされまくっていた時、巨大な西洋人に勝ちまくり祖国に対する誇りを蘇らせた武道家としては、ここでの主人公・霍元甲も同じ。「ドラゴン怒りの鉄拳」のモデルなのだという。
あり方としては、戦後の日本の力道山(彼は韓国人だったが)に近いか。
「ドラゴン怒りの鉄拳」は日本人たちは徹底的な悪役になっていたが、ここでは列強に連なる一員として私服を肥やす三田(原田眞人)という悪役と、直接対戦する武道家の田中(中村獅堂)とに分かれていて、田中の方は霍元甲とのよきライバルとして三田たちの陰謀を敢然と打ち破るのが、ちょっと面映いくらい格好いい。
「三田」というのは三田=慶応義塾大学の創始者・福沢諭吉=脱亜入欧論者というつながりと見るのは、穿ちすぎか。
相手を倒すことしか考えていなかったことが自分の家族にに跳ね返る悲劇から、戦うのは戦いを通して自分を高めるためで相手を否定しやっつけるためではないと学ぶ後半への展開は、典型的に武(「武」という文字はもともとは「矛を止める」という作り)の精神を表している。
それは同時に、東洋の国同士でいがみあうべきでない、敵は西洋列強だというメッセージも含んでいるだろう。
今のように日本と中国の関係が冷え切っている(と、される)時期にこれが公開されたのは、いささか間が悪かった。いや、良かったか。
原田眞人は「ラスト・サムライ」に続き欧米かぶれの日本人役。当人もイギリスとアメリカで映画を学び、映画監督としてアメリカと日本の両方を股にかけて活動している人で、それをキャスティングする効果。
肝心の数々のアクロバティックなマーシャル・アーツ場面の冴えは衰えず。「HERO」ほど映像的装飾が過剰でなく体技自体を楽しめる。ただし、格闘映画としては、終盤の展開はアンチクライマックスに近く、しぼんだ印象。
「ワンス…」シリーズだと、日本人であるこっちまで中国ナショナリズムに加担したくなるくらいエネルギッシュで興奮させられたものだが、そこまではいかず。あれが公開された当時と今とでは日中関係が変わったから、というだけでなく、映画自体の作りが「闘い」を否定しているからだろう。
(☆☆☆★)
SPIRIT - goo 映画
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あれも実在の人物・黄飛鴻が主人公だったが、清朝末期、列強諸国に侵略されてコケにされまくっていた時、巨大な西洋人に勝ちまくり祖国に対する誇りを蘇らせた武道家としては、ここでの主人公・霍元甲も同じ。「ドラゴン怒りの鉄拳」のモデルなのだという。
あり方としては、戦後の日本の力道山(彼は韓国人だったが)に近いか。
「ドラゴン怒りの鉄拳」は日本人たちは徹底的な悪役になっていたが、ここでは列強に連なる一員として私服を肥やす三田(原田眞人)という悪役と、直接対戦する武道家の田中(中村獅堂)とに分かれていて、田中の方は霍元甲とのよきライバルとして三田たちの陰謀を敢然と打ち破るのが、ちょっと面映いくらい格好いい。
「三田」というのは三田=慶応義塾大学の創始者・福沢諭吉=脱亜入欧論者というつながりと見るのは、穿ちすぎか。
相手を倒すことしか考えていなかったことが自分の家族にに跳ね返る悲劇から、戦うのは戦いを通して自分を高めるためで相手を否定しやっつけるためではないと学ぶ後半への展開は、典型的に武(「武」という文字はもともとは「矛を止める」という作り)の精神を表している。
それは同時に、東洋の国同士でいがみあうべきでない、敵は西洋列強だというメッセージも含んでいるだろう。
今のように日本と中国の関係が冷え切っている(と、される)時期にこれが公開されたのは、いささか間が悪かった。いや、良かったか。
原田眞人は「ラスト・サムライ」に続き欧米かぶれの日本人役。当人もイギリスとアメリカで映画を学び、映画監督としてアメリカと日本の両方を股にかけて活動している人で、それをキャスティングする効果。
肝心の数々のアクロバティックなマーシャル・アーツ場面の冴えは衰えず。「HERO」ほど映像的装飾が過剰でなく体技自体を楽しめる。ただし、格闘映画としては、終盤の展開はアンチクライマックスに近く、しぼんだ印象。
「ワンス…」シリーズだと、日本人であるこっちまで中国ナショナリズムに加担したくなるくらいエネルギッシュで興奮させられたものだが、そこまではいかず。あれが公開された当時と今とでは日中関係が変わったから、というだけでなく、映画自体の作りが「闘い」を否定しているからだろう。
(☆☆☆★)
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