prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「明治大帝と乃木将軍」

2006年12月17日 | 映画
1959年製作の大蔵貢製作・原案による新東宝映画。

「明治天皇と日露大戦争」の大ヒットに味をしめたアラカン嵐寛寿郎の明治天皇による姉妹編、というより焼き直しで、水師営の会見の場面など、デジャ・ヴを覚えるくらいそのまんま。

徹底して大衆受けした講談調の忠烈一途の武人としての乃木希典と、英明な大君としての明治天皇のイメージを忠実になぞって、ドラマらしく仕立てる細かい味付けとか解釈とかは一切無視し、「作家性」を見事に捨て去っている。
第一歩兵連隊を乗せた常陸丸が撃沈されるシーンに至っては「平家物語」ばりに琵琶の伴奏つきで語られるのだから恐れ入る。

乃木将軍の軍神化が軍国主義に利用されたのを否定しなくてはいけないといった後年の日本映画が囚われた反戦的タテマエがまったく見られないのは、別に褒めるわけではないがかえって新鮮。

やたらと左右対称の堂々たる構図が目立つ。出てくるヒゲを生やした顔のご立派さを含めて、お札を見せられてるみたい。

旅順攻撃で犠牲者ばかり出てちっとも勝てないのに怒って乃木邸に石を投げた大衆が、勝った途端提灯行列で囲んで万歳を三唱するなど、大衆のいいかげんさの描写だけ結果としてリアル。


本ホームページ

明治大帝と乃木将軍 - goo 映画