あまりに球が速すぎてなかなか捕球できるキャッチャーがいないピッチャー、という話は「巨人の星」の青雲高校入学当時の星飛雄馬みたいだが、プロになってから凡人のようで「選ばれた」キャラクターである伴宙太の間でないとバッテリー=人間関係を結べなくなってくるようなことはなく、どんなに才能や能力に恵まれていても、自分が病弱で野球をできなくても兄の野球を楽しんでくれる弟のように、それを受け止めて評価してくれる相手がいなければ満たされることはない、いう人間が互いに関係持つ喜びの基本が野球以外の人間とも見つけていく話になっていて、普通の人間にもうなづける。
体育会系・根性ものにありがちなムダな我慢を強要あるいは自分で「もういい」と自己規制してしまうと、他人が能力を発揮する足をひっぱるようになる、というありがちな典型を卑劣な先輩たちに見るよう。
その先輩たちがちらっと試合を「思わず」見てしまっている姿を入れているのが、いい。憎まれ役なりに一部の理がある。
野球シーンのリアリティは出色。昔の日本映画だと頭からカット割りでそれらしく見せようとしたのに比べるとずいぶん進歩したもの。
地方を舞台にする日本映画は、風景と日本家屋の建築美と地元の協力に恵まれるようで、収穫多し。
(☆☆☆★★★)