「おババよい」「ヌイよい」といった原作者の村田喜代子によってかなり「作られた」方言と思しき独特のセリフが全編に使われるのが、晩年の黒澤明作品で有名な上田正治撮影の、すごい丹念なロケによる厚みのある画面とあいまって、リアルであるとともに独特の様式化が入ってきていて、木下恵介版と今村昌平版の「楢山節考」を足して二で割ってプラスアルファしたよう。
「楢山節考」の姥捨てほどあからさまに残酷ではないが、やはり残酷には違いないことを様式を通すことでかえってしっかり見つめることができる。
老人たちは蕨野に移り住んで働けたらその時だけ里に出てくるという、妙に合理的・近代的なシステムなのが、長生きさせるだけさせて働けるだけ働かせる現代のシステムの残酷さを逆に照射しているみたい。
いくら寿命が延びて食べるのにさほど苦労しなくなったといっても、老いて死ぬことに昔も今も変わりないのだから。
違うのは、人の生き方死に方を「国」が規定していないこと。他から決められていないところに尊厳もある。
市原悦子が実力全開。
(☆☆☆★★)