離人感、というのか自分を他人のように感じる感覚をよく出している。
全編にわたって原作小説の三人称叙述を朗読して、ときどき成年してからの滝谷がぼそっとひとごとのようにその一部を引き取って独り言として呟く、というスタイル、カメラが横移動していって物陰に入って出て行くとシーンか変わっているといった間のとり方、など、スタイリッシュな統一、空気感の出し方は完璧に近い。
途中、顔と体型のそっくりな別の女を死んだ妻の代わりに雇うというあたり、ヒッチコックの「めまい」みたいな変態映画になるのかと思わせて、再び孤独の中に戻るというあたりが良くも悪くも淡白なところ。
宮沢りえのファッションがそれほど「見せる」要素はないのだけれど、よくできている。
(☆☆☆★)