prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アモーレス・ペロス」

2008年06月14日 | 映画
ふだん飼いならされた犬ばかり見ていると、ここで血まみれになって互いに食い殺しあう犬たちを見せられると、相当にショッキング。もちろん人間も同様で、自動車事故が個々の人々を結び合わせるきっかけになっているわけだけれど、戦場カメラマンが実は一番人体が見た目にひどい損傷を蒙るのは戦場よりむしろ先進国の都会の自動車事故の方だと言っていたのを思い出す。血まみれの姿が犬たちにそのままだぶってくる。

時制を交錯させながらまったく別の環境に住んでいる人たちを交錯させる技法は今では珍しくないが、それぞれのエピソードの展開のエネルギーがすごく、好青年ガエル・ガルシア・ベルナルが嫌っている兄同様に人格が荒廃していって見た目もそれについていくあたりや、テレビに映っている「別の世界の人」に思えるキレイキレイに着飾った人がみるみる心身ともに傷だらけになっているあたり、世界をまるごとつかみとろうとするような力技。

「バベル」はちょっと大風呂敷を広げすぎたように思えたが、扱っている環境とすると割とコンパクトなこちらの方がむしろ世界の広がりを感じさせる。
(☆☆☆★★★)


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