prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「アミスタッド」

2009年04月03日 | 映画

本来、ドラマの中核にいるはずの黒人奴隷たちが「荷物」扱いされ、その「所有権」を巡る裁判でさまざまな立場の人物たちが争うのだが、最終的に奴隷が一応人間扱いに脱皮するにせよ、そうなるのはもっぱら他力本願なので、どこか核心を避けて周囲をぐるぐる回っている印象は免れない。

主にマシュー・マコノヒーの勝つのが第一で思想的なバックボーンはない弁護士が、奴隷に対する同情論ではなく国の成り立ちに関わる抽象度の高い議論として弁論を組み立てるようになっていくドラマに、法が国の根幹になっているアメリカのありかたを見る勉強にはなる。

積極的な行動のとりようがない中、忍耐し続けること自体が強い訴えになっている辛抱役のジャイモン・ハンスゥはこれが映画デビューだったと思うが、アフリカのベナン共和国出身ということもあって、白人の血が混ざっているアメリカ黒人とは顔つきや体型がかなり違う気がして、存在自体がひとつの重しになっている。
ライオンを倒した男、という設定なのだが、出身のシアラレオネという国名自体、語源はポルトガル語で「ライオンの山」という意味だそうで、同じハンスゥ主演の「ブラッド・ダイヤモンド」の舞台になっている。昔は奴隷狩りの舞台、今は内戦の舞台と、何ともやりきれない。
(☆☆☆★)