ホラー風の体裁で売られているけれど、ここにいるのは「エクソシスト」のウィリアム・フリードキンであるより、「真夜中のパーティ」('70)のフリードキン。
つまり舞台劇の映画化にウィリアム・ワイラーの二代目になるか(淀川長治)と評された演出家の37年後の力量に注目することになるが、腐っても鯛ととるか腐った鯛ととるか、微妙なところ。
舞台の映画化にありがちな空間をムダに広げることなく、リアリズムに沿って映像分割するのには成功し、得意の閉所恐怖症的感覚も出たが、舞台のリミットを守って妄想に現れる「虫」を直接画面に出すことはしないのはいいとして妄想が「伝染する」、という感じを出るくらいに映像が狂気をはらんで奔る、というわけにはいかない。本来狂気がかった表現はフリードキンの得意とするところだと思うが。
特典映像のインタビューで、フリードキンは「エクソシスト」が最初公開された26館の上映状態がどうなのか、音響からスクリーンの明るさから毎日チェックしたという。「恐怖の報酬」が公開されたのが、ちょうど「スター・ウォーズ」と同時期で、つまり映画のあり方が大きく変わる時期とぶつかってしまったもので期待されたほど当たらなかったとも。
それにしても、顔だけ見ていると若い時とあまり変わらないが、全身写ると完全な洋ナシ体型なものでびっくりする。
(☆☆☆)