prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

若き日の黒澤明 ~幻のシナリオに隠されたクロサワ映画の原点を探る~

2009年05月22日 | 映画
黒澤が『姿三四郎』で監督デビューを果たす2年前、当時の映画界の重鎮、伊丹万作が絶賛したシナリオ『達磨寺のドイツ人』を軸に、若いときの黒澤を読み解く。

モデルであるブルーノ・タウトが実際に滞在した期間を五年ほどあとにずらして、独ソ不可侵条約が締結されて日本が「ドイツに裏切られた」と感じていた時期にしたという創作が興味深い。

原田美枝子がシナリオの一節を朗読すると、葬列の行進のリズム、タウトと村人のカットバックなど、ありありと目に見えるよう。

余談だが、タウト展で見たタウトデザインによる近代トルコの祖・ケマル・アタチュルクの葬儀のバックの幕の紋章を見て、一瞬黒澤の「乱」の一文字家の家紋と見間違えた。トルコ国旗である新月旗が三日月と星なのに対して、「乱」の一文字家の家紋が三日月と太陽で、つまり「明」という文字を図案化したものともとれる。
新月旗はオスマン・トルコ時代からのものだから偶然だろうけれど、妙な感じ。


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