グレゴリー・ペック扮する有名なガンマンに、彼をやっつけて名を上げてやろうという若者がぞろぞろまとわりついてくる、いつ殺されるかわからない神経症的なスリルが眼目。
撃たれたあと、撃った相手にこれからの運命を告げるあたりで、かつて彼自身かつてそういう野心満々の若者だったことがうかがわれ、元無法者でもうまく立ち回って保安官におさまっている旧友の設定が皮肉なコントラストを作っている。
オープニングとエンディングの雲が厚くたれこめた空の下を馬で往くガンマンの姿のが頭の上に蓋をしているようで(撮影・アーサー・ミラー)、全体に西部劇としてはアウトドアの場面が少ない。50年代にはかなりこういう欝的ウエスタンが増えたらしい。ハリウッドが赤狩りの最中だったせいか。
主舞台になる街の酒場と保安官事務所が通りを隔てて対角線上に位置していて間を人が行き来したりするほか、なんともいえず画面に奥行きを出している演出。
(☆☆☆★)