新藤兼人監督・脚本で石原裕次郎主演というかなりミスマッチな一作。
裕次郎が外国船が運んできたスクラップを荷揚げする(スクラップをもっぱら人力で運ぶのにびっくり)人夫たちに檄をとばす登場場面で、人夫たちがぼそっと聞いているだけでおうっとも何とも言わないのが妙な感じだし、スクラップが落ちてケガ人が出ても上から見ているだけで駆けつけようともしない。ふつうだったら皆に慕われている若頭といった描き方になるだろうが、どうもただの中間管理職みたいで魅力に乏しい。
カッコ良く悪徳業者のボスをやっつけるわけでもなく、逆にのされて反撃するわけでもないから、通俗娯楽とすると定型を外しすぎ。かといって社会派的にリアルな迫力を見せるには宮島義勇の撮影が「蟹工船」とまではいかなくても重厚感があるにせよ、スターがいる分作り物くささが抜けない。
日本人たちが妙なみやげ物を外人水夫に売りつけたり怪しげなクラブに案内しているあたり、1957年の日本というのは「もはや戦後ではない」と言われた一年後とはいえ「後進国」だったのだなと思わせる。
(☆☆☆)