prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ツリー・オブ・ライフ」

2011年08月26日 | 映画
よくここまでハリウッド的あるいは一般的文法を使わず、独自の文体を通したことに恐れ入る。
一方でここまでやらなくてもいいのではないかとも。

監督のテレンス・マリックがハーバード大学の哲学科を出ているせいか哲学的な作品かと思ったら、瞑想的と言ったほうがいい感じ。神を頂点とする宇宙の秩序からあくまで人間が見た秩序にコペルニクス的に置き換えたカント以来の西洋哲学とは違って、神(あまり一神教ではないが)の視点が入り込んでくるのが、この人の作風。

「天国の日々」で、リチャード・ギアとリンダ・マンズが夜の川で逢引する場面、浅い川で暗いので水の上を歩いている感じがちらっとする。そこで投げ捨てられたワイングラスが、もう登場人物たちには見えないのに川底に降りたカメラがアップにする。水にひそむ、何か神につながる力の暗示は、射殺されたギアが川に倒れこむのを水中から捉えたカットで完結する。

これまでの作品では汎神論的なセンスを自然描写の中に見せていたが、身近な空や野や太陽などを通り越して自然科学的な宇宙像にまで行くと、自然に対する人間の畏れという感覚が薄れて、人間が科学の力で撮って来た宇宙と言う感じにかえって近づく。

ブラッド・ピット、ショーン・ペンといったスターも、いわゆる演技的見せ場は乏しい。極端に言えば木や草と同じ次元の扱い。

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監督・脚本 テレンス・マリック
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社