講演者は西洋占星術師・鏡リュウジ、文芸評論家・安藤礼二、ユング派分析家・河合敏雄、コーディネーターは思想家批評家・若松英輔と、まことに多彩というか、ほとんどとっちらかった面々。
もとより井筒俊彦は三十以上の言語を習得してギリシャ哲学から西洋近代哲学、イスラーム思想、ロシア文学、易などの中国思想、日本の古典から近代思想にべらぼうに広範囲の思想を縦横無尽に往来する途方もない碩学なわけだが、一方でそれがばらばらではなくむしろ一貫したものが厳としてある、というのが語る面々がばらばらであることによってかえって明確になった感。
ノートをとったら4ページくらいになったのでとてもまとめては書けないので、メモ風に。
言語化しえない肉体的な神秘体験が一方にあり、それを言語化するという一見ありえない試みにおいて、ついにあちら側にあと一歩踏み込みきれなかった、ユングではないか、それがやや物足りないと河合発言。
ツェラトゥストラ的体験を回避しているとも。
欧米の知識人で日本には霊的知識人がいる、といわれたという(誰の発言かは記録できず)。自然に彼岸と此岸とを往来するのが日本というか東洋なのかもしれず、近代と前近代とが激突する場でもある。
ユングに出てくるイメージの多くがゲームのキャラクターになっている、という河合敏雄の発言が可笑しい。昔のお伽噺や神話伝説があらかたゲームに移行したということだろうか。
村上春樹に出てくる暴力的なイメージが神秘体験におけるディオニソス的な狂騒と通じているのではないかという意見も出る。シンポでは特に言及しなかったが、だから世界的に読まれているのではないかと思わせる。
易が示す卦が示す意味空間は極度に狭い、という井筒の記述に占星術師である鏡リュウジが強く反応する。占いというと大風呂敷を広げそうだが、実はごく狭いから意味を持つ、と言う。これに河合が精神分析で使う箱庭療法で限られた空間に限られたアイテムを並べるのと対応すると話がリレーする。
井筒が言及しているのが多い思想家・著述家が必ずしも重要とは限らない、最も影響を受けたと語っている西脇順三郎については一度も触れていない、また言語が持つ呪術性については英語の論文では扱っているが、日本語の文章ではほとんど触れていない(ちなみに、今出ている日本語による全集と同じくらいの英語による論文がある)。
一番重要なところについては、かえって語らなくなるということかもしれない。
呪術性、コトバが持つ根源的なうむをいわさずここではないとこからかっさらっていく機能というのは、詩において顕著なのではないかと、とちょっと思った。だから詩人の西脇が重要だったのではないか。
井筒俊彦というとイスラームというのは、コトバをもって最も世界を変革したのがムハンマドだったからであり、まずイスラームありきではない、井筒が最初に学んだのはヘブライ語と旧約聖書の方だ、「ロシア的人間」で触れられるロシア文学とはつまり革命の培養土としての文学の意だ、とも。
井筒俊彦生誕100年記念トークセッション 「伝播する井筒俊彦」
本ホームページ
もとより井筒俊彦は三十以上の言語を習得してギリシャ哲学から西洋近代哲学、イスラーム思想、ロシア文学、易などの中国思想、日本の古典から近代思想にべらぼうに広範囲の思想を縦横無尽に往来する途方もない碩学なわけだが、一方でそれがばらばらではなくむしろ一貫したものが厳としてある、というのが語る面々がばらばらであることによってかえって明確になった感。
ノートをとったら4ページくらいになったのでとてもまとめては書けないので、メモ風に。
言語化しえない肉体的な神秘体験が一方にあり、それを言語化するという一見ありえない試みにおいて、ついにあちら側にあと一歩踏み込みきれなかった、ユングではないか、それがやや物足りないと河合発言。
ツェラトゥストラ的体験を回避しているとも。
欧米の知識人で日本には霊的知識人がいる、といわれたという(誰の発言かは記録できず)。自然に彼岸と此岸とを往来するのが日本というか東洋なのかもしれず、近代と前近代とが激突する場でもある。
ユングに出てくるイメージの多くがゲームのキャラクターになっている、という河合敏雄の発言が可笑しい。昔のお伽噺や神話伝説があらかたゲームに移行したということだろうか。
村上春樹に出てくる暴力的なイメージが神秘体験におけるディオニソス的な狂騒と通じているのではないかという意見も出る。シンポでは特に言及しなかったが、だから世界的に読まれているのではないかと思わせる。
易が示す卦が示す意味空間は極度に狭い、という井筒の記述に占星術師である鏡リュウジが強く反応する。占いというと大風呂敷を広げそうだが、実はごく狭いから意味を持つ、と言う。これに河合が精神分析で使う箱庭療法で限られた空間に限られたアイテムを並べるのと対応すると話がリレーする。
井筒が言及しているのが多い思想家・著述家が必ずしも重要とは限らない、最も影響を受けたと語っている西脇順三郎については一度も触れていない、また言語が持つ呪術性については英語の論文では扱っているが、日本語の文章ではほとんど触れていない(ちなみに、今出ている日本語による全集と同じくらいの英語による論文がある)。
一番重要なところについては、かえって語らなくなるということかもしれない。
呪術性、コトバが持つ根源的なうむをいわさずここではないとこからかっさらっていく機能というのは、詩において顕著なのではないかと、とちょっと思った。だから詩人の西脇が重要だったのではないか。
井筒俊彦というとイスラームというのは、コトバをもって最も世界を変革したのがムハンマドだったからであり、まずイスラームありきではない、井筒が最初に学んだのはヘブライ語と旧約聖書の方だ、「ロシア的人間」で触れられるロシア文学とはつまり革命の培養土としての文学の意だ、とも。
井筒俊彦生誕100年記念トークセッション 「伝播する井筒俊彦」
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