prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「美女と野獣」

2014年11月10日 | 映画
ディズニーによるミュージカル・アニメ版(1991)が一番有名だろうが、J・L・ド・ボーモンによる原作小説(これもG・ド・ヴィルヌーヴによる先行作品あり)を、1946年にフランスでジャン・コクトー監督・脚本、ジャン・マレー、ジョゼット・デイ主演により実写映画化され、日本未公開だが2008年にオーストラリアでも映画化されているという。ちなみにディズニー版の実写映画化も決定したとのこと。

原作小説はかなり短いもので、ドラマ化はそれぞれアプローチの仕方が違う。
原作には仇役らしいキャラクターがおらず、まずコクトー版だとガストンという乱暴者を創作してこれを野獣を演じているジャン・マレーと一人二役で演じさせ、ラスト野獣の屋敷に殴りこんだガストンが矢を射られて絶命するとみるみる野獣の姿になる代わりに野獣が本来の王子の姿(もちろんマレー自身)に戻る。つまり、美醜において内面と外観が逆だったのがそれにふさわしく戻ることになる。
あと、野獣のメイクをしっぱなしだとせっかくトップスターにして超美男子を主演に迎えているのに全然顔が見えないという困ったことになるのを防ぐという事情もあるだろう。

ディズニー版だとガストンは出てくるが王子とはまったくの別の顔を持つキャラで、村人を煽動して野獣の屋敷を襲わせるただのあくどい乱暴者になっているのが、いかにもアメリカ的。(それにしても、ラストに野獣から戻った王子の顔はつまらなかった)あと、ガストンは明らかにコクトーの創作からもってきたのに何か断ったのだろうか。

で、今回はいわば本家フランスでのリメークになるが、ガストンは出てこない(フランス語の映画を新しくなったスカラ座で見たのは初めての気がする)。
代わりに美女ベルの父親が破産して息子(ベルの兄)がこさえた借金を取り立てにくる無法者の集団が仇役になるのだが、金絡みの話が多くておとぎ話としては殺風景だし、よく考えてみると結局兄は借金を返していないのだな。いくらムチャな借金でもスルーはないでしょう。

野獣と王子はヴァンサン・カッセルが演じているわけだが、王子として顔出しするのは過去の場面ということになる。ベルが鏡をのぞくと水面のように揺らいで過去が向こう側に再現されるというのは、コクトーの「オルフェ」の鏡の向こうの世界に入っていくシーンのオマージュ(というのか)だろう。

なぜ王子が野獣の姿になったのかというと森の精を殺したためというエコロジーに配慮したみたいな理由付けだが、困るのは出だしから森や野山が人工的なセットやCG製なもので、なんだかちぐはぐ。結局CGショーが見せ場になり、野獣の醜い姿になったコンプレックスや畏れ、ベルの姿形に惑わされない賢さといったドラマのポイントがお約束で終わってしまっていて、詩情や美意識も薄い。

絵本を母親が幼い子供たちに読み聞かせする内容が本編になるという趣向も底が割れている。

まったくの余談になるが、ジャン・マレーが来日した時に向田邦子がエレベーターで一緒になって至近距離で見て「顔立ちは気恥ずかしいほど端正だった。目じりに大きな目やにがついていた」などとエッセーに書いている。
(☆☆☆)


本ホームページ


公式ホームページ

美女と野獣@ぴあ映画生活

映画『美女と野獣』 - シネマトゥデイ

11月9日(日)のつぶやき

2014年11月10日 | Weblog

【本棚登録】『酔眼のまち-ゴールデン街 1968~98年 (朝日新書 79)』たむら まさき booklog.jp/item/1/4022731…


井筒俊彦生誕100年記念トークセッション 「伝播する井筒俊彦」 #講演 #シンポジウム #思想 #哲学 goo.gl/M8pfTd


増税先送りなら解散、年内にも総選挙…首相検討(読売新聞) headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141109-… 読売ねえ、またトバシじゃないのか?


アドリブと即興とは別のものだ。何をすべきかわかってないのと、ただ何かを言うのとは別のことなんだ。僕らは書かれた脚本に従って即興している。未熟な創造性には頼ってない。

家畜人六号【小暮 宏】さんがリツイート | RT

読売はすっかり権力の走狗、安倍読売新聞になってしまった─と永田町でも。
そもそも 国会議員の定数削減とセットだったはずなのに。法律通りに、というなら定数削減もしなければならないのに、そんな話は聞くこともなく⇒増税先送りなら解散、検討 headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141109-…

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増税先送りなら解散、年内にも総選挙…首相検討(読売新聞)
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141109-…
これは悪質すぎる記事。新聞は新聞社の願望を書くものではない。根拠を1パーセントも明らかにせず報道し、責任も取らない。これが「マスコミ特権」です。

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【刑務所de文化祭!?】獄中グルメを満喫! マニアック過ぎる『府中刑務所文化祭』に参加してみた! youpouch.com/2014/11/08/236…  なんと参加者2万人! 麦飯定食、刑務所パンは完売! 作業棟見学も可! 刑務所でPC解体もやってたのね。


早期解散を重ねて否定 首相 - Y!ニュース news.yahoo.co.jp/pickup/6137874 なんかやっぱり讀賣のとばしっぽくなってきたぞ。


「日本鬼子(リーベンクイズ)」トーク 報告①

松井稔監督にアレコレ聞きたいと、トークの実現を熱望していた。
映画を見て、最も私が気がかりだったのは、“筆舌に尽くし難い”日中戦争での”加害の体験をカメラに向かって喋る元・皇軍兵士たち。口では悔い改めているように見えるのだが…。

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「日本鬼子(リーベンクイズ)」報告②

ホントのところはどうなんだろうか?と疑問を抱いたからだ。犯す、殺す、奪う、etcの体験を語りながらも「オモシロカッタ」という元・皇軍兵士たち。その言葉を聞いた時に、私は怖いと感じた。彼らは初めは、命令だからとやむを得ず、嫌々蛮行を実行…。

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「日本鬼子(リーベンクイズ)」報告③

だが、一気呵成に自ら進んで蛮行を繰り返すようになる。
そして今、悔い改めているわけだが…。

松井監督に、相当しつこく質問を繰り返した。
「元・皇軍兵士たちの体験を、あなたは何を感じながら聞いてたの?」と。

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「日本鬼子(リーベンクイズ)」報告④

胸くそ悪くなる話をリアルに語ってる老人たちに、作り手は、平静でいられたのか?
松井監督は、正直に答えてくれたと思う。が、私は満足しなかった。何かが、抜け落ちている…。とっても大切な何か、が。 pic.twitter.com/4ouSqQ4Vxs

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「日本鬼子(リーベンクイズ)」報告⑤

今、このニッポンが“きな臭い”状況にまっしぐら、という時代だからこそ、この映画を見て、戦争の怖さを語り合うべき、と感じされてならなかった。
各地で市民運動を展開している心あるグループがたくさんあるはず。是非この映画を上映をしてくれませんか?

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「日本鬼子(リーベンクイズ)」報告⑥

松井監督はもちろん、私で良ければ私も討論に馳せ参じます。「ゆきゆきて、神軍」との2本立も有りだと思います。是非、検討していただきたくお願いします。 pic.twitter.com/u12GWhTVzy

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