もちろん大悲劇であるアレンの最初のシリアスドラマと一緒になるわけはないが、喜劇ながらしっかり死が張りついているところは見事に悲劇の裏返しとしての喜劇といえる。
クライマックスのやりとりのひとつひとつがズレながら一糸乱れず進行していく練達の家族会議の進行は、なんでこういちいち互いにズレるのか、ちっとも話が通じないのか、その面倒くささの集大成が家族そのもの。
家族は助け合えとかいうタテマエが一種暴力的に横行する昨今、どういうつもりで松竹大船調の末裔である山田洋次が作ったのかと思わせる。
唯一家族でない蒼井優が「東京物語」の原節子そのままに中では一番まともに心優しく役にも立つ、という位置づけになる。
「男はつらいよ」のうち「寅次郎夕焼け小焼け」の冒頭のジョーズのパロディ、「真実一路」のやはり宇宙怪獣ギララの登場と、なんで山田洋次はことパロディとか引用による笑い、というのは下手、というよりほとんど見て見ぬふりをしたくなるくらい居心地の悪いのか、と思っていたが、今回は繰り返し現れる自作の引用、そして「東京物語」のクライマックスの丸ごとの引用とほとんど異様。
ラストの紙や食器が粉々に散っている家というのは、実はこの世ではなくなっているのではないかと妄想したりした。
横尾忠則のタイトルデザインが意味深。
(☆☆☆★★)
本ホームページ
家族はつらいよ 公式ホームページ
家族はつらいよ@ぴあ映画生活
映画『家族はつらいよ』 - シネマトゥデイ