セコいには違いないのだが、阿部寛の規格外にでかい図体を小さくしている姿が笑いを誘ってじとつかない。
樹木希林が住んでいるかつての高度成長時代の産物の団地が今では古びているところをこまごまと描きこんでいる。
阿部寛が体をむりやり押し込むようにして入っている小さな風呂に何やら妙なものが浮いてくるところ(それをまっくろくろすけと形容するのが、ここ数十年かでジブリが日本の一般生活に完全に入り込んでいるのをうかがわせる)とか、人生ゲームとか、知っているけれど忘れているというレベルのものがさりげなく出てきて、何か棚卸に近い気分になる。
台風で思いがけず元一家が集まって一夜を過ごすのにあたって、夕食で冷凍していたカレー(味噌の容器に入っているから何かと思った)を解凍してカレーうどんを作るというのがなんだかおもしろい。カレーうどんというのは作るのは簡単でも家庭ではあまり食べないものではなかろうか。グリーンピースを散らすというのがまた芸が細かい。なぜカレーうどんに限ってグリーンピースを散らすのだろう。
小林聡美、樹木希林といった達者な人たちと、経験の浅い子供とを共演させてまるで違和感なく見せる。
へらへらしているリリー・フランキーの探偵社の社長が、金のごまかしに対して元警察という顔を見せてスゴ味をのぞかせるのも面白い。
橋爪功が婆さまたちを集めてベートーヴェンの弦楽四重奏をステレオで聞かせてちょっと気取った文化的なことをしゃべってもてている図、にそっくりな図がちょっと前の「家族はつらいよ」にもあって、集まっている一人の吉村和子のまるで文化的なことに興味を持たない夫役が橋爪功、というのが妙な暗号。示し合わせたわけでもないのだろうが。
(☆☆☆★★)
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