飯村隆彦、松本俊夫、金坂健二、真鍋博、など著名な実験映像作家の、それも色々特殊な仕掛けが必要だったりして簡単には上映できない映像作品を見られるのは公共の美術館ならではのこと。
昔のフィルムなので当然鮮明さを欠くのだが、かえってそれが再現不可能性、一回性というもともと当時の芸術運動の持っていた反古典芸術性を記せずして体現しているようでもある。
新宿のかなり騒然とした空気、ただサラリーマンが大勢通路を行き来しているだけでも何か熱気のようなものが映りこんでいる。なるほど当局は「これ」を殺したのかという感。
前衛は時代が経っても前衛であり続けている。
松本俊夫×湯浅譲二が万博のせんい館のために作った「アコ」の記録―といっても、これは360°上映だからごく一部を切り取って記録するしかないのだが―など貴重なものだし、このコンビの湯浅の音楽だけでもソフト化できないものかと思ったりした。
映像作品だけでなく、当時の評論誌などがずらりと展示され、作品と批評が一体化した、というか作品そのものが多分に批評的であり、批評がそのまま作品であって、ヒラエルキーが無化した時代の空気を伝える。
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エクスパンデッド・シネマ再考 東京都写真美術館