prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「家族を想うとき」

2020年01月09日 | 映画
夫は荷物の配達、妻は訪問介護の仕事だからさまざまなところを訪れる、その先々のスケッチひとつひとつに背景と膨らみがある。キャスティングの見事さが光るところで、主演の家族四人にしてもほとんど無名の人たちという意味でほとんど実は訪問先のキャスティングと変わるところがない。

結果として彼らをへとへとになるまで働かせる直接の対象なのだが、訪問先の階級もおそらく上の階級ではない。
夫を搾取する上司にしても実態は中間管理職だろうし、成績があげられなければ簡単に取り換えられる存在にすぎないのが透けて見える。万引きした息子に説教する警官とともにこの上司がスキンヘッドというのが印象的で、何か無機質な人間性の欠落、システムの論理との一体化を感じさせる。

格差社会の中の貧困を描いた作品、には違いないのだが、かつてのブルジョアとプロリタリアートの二項対立で捉えるには敵役であるところの資本家の姿が見えにくくなっていて、とりあえず見えるのは動かしがたい巧妙に逃げ道を塞いでいるシステムの方だ。それは独立心やプライドといったプラスに見える感情として内面化されているからなお始末が悪い。

正直、巧妙に姿を隠している大資本そのものの姿を可視化するのが難しいのはわかるが、やはりそこまで突っ込まないと不完全燃焼の感は残る。




1月8日のつぶやき

2020年01月09日 | Weblog