prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「1917 命をかけた伝令」

2020年02月28日 | 映画
フィルム時代にはカメラに装着できるワンロールに10分ぶんのフィルムしか詰められなかったので、ヒッチコックの「ロープ」から、相米慎二の「雪の断章」、デ・パルマの「スネーク・アイズ」まで10分を越すカットは黒味を入れたり目の前を横切った物でつないだりして擬似的なワンカットに見せていたわけだが、デジタル時代になって正真正銘の10分以上のカットを撮れるようになつた。

アルフォンソ・キュアロンの「トゥモローワールド」ではデジタル技術で別々のカット素材をシームレスにつなぐことが可能であることを広く示し、今ではありふれた技法にすらなっている。

で、この全編ワンカット「1917」はもちろんデジタル撮影されているのだが、カット素材のつなぎ方は案外古典的な黒味や横切る物でつないでいる方法を採用しているように見受けられる。

伝令兵が進んでいく長い長いノーマンズランドの視界に入っていっては消えていくおびただしい泥濘、腐乱死体、ネズミやカラスといった動物、それらの積み重ねのがワンカットに凝縮されている壮観と悲惨。
撮影はもちろんだが、この背景をトータルで現出させたプロダクションデザインと総技術陣の偉業。

第一次大戦全体からすれば比較的小さな地域も、個人が走破するとなると、しかもいつ見えない敵の視界につかまり銃撃の対象になるかわからない状態では途方もない広がりと重みを持つ。

主役には地味めの若手を使い、ところどころにイギリス演技陣の現代の重鎮たちを配してそれぞれに演技的見せ場を提供する憎さ。




2月27日のつぶやき

2020年02月28日 | Weblog