若い時(柳楽優弥)と歳とった時(田中泯)のそれぞれ二章のスタイリッシュな全四章構成。
時代によってさまざまに描き分けた波をモチーフにして、波という不定形なエネルギーの表出に北斎と人間の生きる欲望そのものを見る。
ダブルキャストは一人の人間が単に歳を重ねたというより、時を超えて命が形を変えてうねっている姿と見立てたよう。
前半の絵師や草紙屋同士のライバル意識など、まだ後年の評価が定まっていない芸術家たちの生なエゴが出ている。
幕府の贅沢取り締まりの「改革」の愚劣さが今の政府の愚劣さとかぶりながら、贅沢奢侈を一方でぶら下げて誤魔化す代理店的手口は今の方が悪質化しているなと思わせる。
美術衣装がしっかりしていて、吉原の天井まで続いている巨大な孔雀の絵など誰が描いたのかと思う。
ベロ藍のくだりは説明不足というか、説明するとかえって面倒なので知ってる人はわかればいいという描き方。
北斎漫画の姿を実際の人間たちが演じる再現シーンも同様。