佐藤二朗が主宰する劇団ちからわざで上演した芝居を脚色監督を兼ねて映画化。
時代設定は現代っぽいのだが、外国人も訪れるらしいおおっぴらに置屋だらけの島というのはさすがに現実では考えにくくて、舞台ならではの世界と考えていいだろう。
置屋のマネージャーが山田孝之、オーナーが佐藤二朗で、春を売る女たちが集まっている感じは色彩や光のテクスチャー、何より女優陣の演技に溝口健二っぽいねっとりした密度がある。
オーナーが女たちやマネージャーを暴力で支配しているのはありがちだけれど、家に帰るとよきパパというのは映画だとどうもウソくさく、途中からの伏せてあった事情が明かされるストーリーテリングも映画でやると浮き上がる。難しいところ。
同じテアトル新宿で見た「くれなずめ」も舞台の映画化だったが、舞台の現実離れを踏まえて改めてレンズによるリアリズムに晒す方法の映画があちこちから期せずして現れてきた感。
映像のリアリズムが前ほど信じられるものではなくなっているせいか。
笠原和夫がしきりと日本映画の監督はリアリズムが身に付いてないと繰り返していたのが頭をかすめた。