prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「返校 言葉が消えた日」

2021年08月19日 | 映画
ジョーダン⋅ピールの「US」から目立つようになった、ホラーの器あるいは仕掛けを社会派的なテーマに生かす作りのひとつ。
もっと遡ると「パンズ⋅ラビリンス」さらには「ミツバチのささやき」にまで通じるだろう。

独裁政権下の台湾の白色テロの恐怖と、ホラーゲームのグロテスクなクリーチャーや殺しの趣向とが結び付いている。というか、もとのゲームがそういう作りらしい。
クリーチャーの口の中に鏡のようなものが見えるのがどこか暗示的。

検閲によって直接的な発言ができない時にメタファーとして象徴的詩的表現に置き換えることはままあることだが、そうせざるを得ない抑圧された監視社会を潜りぬけた上で自由に発言できるようになった時に、一番勢いと力のある映画が出てくる気がする。
台湾しかり韓国しかりで。
50年代の日本映画もそうだったのかもしれない。

ホラーが流行るのは平和な世界だからという説があったけれど、世界がホラー化したものだからぐるっと回ってごっちゃになってきている感じもする。