prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「血と砂(1965)」

2022年08月17日 | 映画
オープニングからデキシーランド・ジャズの「聖者の行進」が軍楽隊によって演奏されるのがまことにリズミカルな編集と共に流される。
岡本喜八は生涯本格的なミュージカル・コメディを作りたがっていながら、ついに本格的なものはできなかったが、それでも随所にそういう嗜好をのぞかせる。

戦争ものでコメディというと、だいたいゲーム的な中に笑いを散りばめるかブラックユーモアに行くかだが、そのどちらでもなく特に若い連中が何の愉しみもなく死地に向かうのを強いられる哀れさ情けなさが泣き笑いが中心になっている。

晩年の「ジャズ大名」でも幕末で尊王攘夷だなんだでドンパチやっているのを尻目にもっぱらジャズに興じている殿様とその取り巻きの姿は、ここから見ると一種の理想郷なのだろう。

伊藤雄之助の「靖国神社にだけは行くなよ、あそこはねぇ、他の神様にいじめられるから、一番良いのはなーんにもなくなっちまうこと」というセリフが凄い。

戦闘シーンの火薬の使い方も相当に盛大。日本の戦争映画は「敵」がはっきりしないというのが佐藤忠男の説だったけれど、これもゲリラたちはもっぱら無機質な群れとして登場する。