テレンス・マリックの長編デビュー作「バッドランズ」(「地獄の逃避行」)をちょっと思わせる若いカップル犯罪者の逃避行もの。若い女のナレーションで運ぶ、どこか寓話がかったところが似ている。
奇しくもケリー・ライカート監督の長編デビュー作でもある。
ただ、正確に言うと犯罪を犯して逃げているのではなく、偶然手に入った銃をいじっているうちに撃ってしまい、それで人を殺傷したと勘違いして逃げ回るが、本当は誰も撃っておらず、逃げ回るのに必要な小金を盗んだりといった犯罪を犯していくうちに本当の殺人にまで至ってしまうという、逆転した構造になっている。
アメリカの田舎のだだっ広い感じがかえって閉塞感を感じさせ、なんでもないような家だが、昔そこに住んでいた女が夫を殺して壁に埋めたというのに何とも思わない住んでいる刑事の異様な無関心さが妙に不気味。
元ドラマー志望で今でもときどき叩いているというキャラと、そのドラムの音をBGMとしても使っている効果。
「あちら側」に行ってしまうかどうかは線の上を歩いているようなものだという緊張感。面白おかしいという映画ではないが、どこか引き付けられるところはある。
出来事がひどく唐突に起こり、投げ出すように断ち切られる独特の演出タッチ。