聴覚障碍者の両親を持つ健常者の子供が主役という点で「コーダ あいのうた」とそのオリジナル「エール!」とモチーフはつながるわけだが、「コーダ」のラストで主人公が歌の才能を評価されて故郷から都会へ旅立つのというはっきりした区切りがつくのとは対照的に、宮城から東京へこれといった才能も学歴も将来の見込みなしに出てきた後の描写が後半を占めている。
中盤で吉沢亮の主人公が都会に出ていくところをことさらに区切って描かず、気がついたらいつの間にか都会にいる描き方で、ガラケーとかVHS、テレビデオなどが置かれていることで一昔前の時代とわかる。平成7年と書かれた書類が写ったりする。
パチンコ屋でバイトしているところで客の二人が大きな声でケンカしているのをまるで気がつかない(聞こえない)で玉を打っている太った中年のおばちゃんが聴覚障碍者とわかり(やっている河合祐三子も本物 )、これまた後でいつの間にか絡んでくるなど、場面と描写を上手く省略しながら描いている。
これまた後で役者志望だったらしいと描かれるのだが、吉沢亮だと何せ本物の役者なのだからそのまま役者になるのではないかと期待というか予想させてしまうかも。
肩のあたりに入れ墨を入れたでんでん扮する祖父がヤクザで、酔ってやたら大きな声を出す。
これもヤクザであることも障碍者同士の結婚に反対していたことも初めから割らずに順々後からわかるように描いている。
ラストでここまで描かれた二つの世界が一目で見渡せるようになってから
タイトルの文字列が「ぼくが生きてる」「ふたつの世界」と左右に割って置かれ、なるほどと思った。