タイトルからすると勝新太郎がど根性を元手に商売でのし上がっていく話みたいだけれど、実物はまるで違う。
冒頭、勝新のタクシー運転手がたまたま見かけたひき逃げを見逃せず客を乗せたまますごい勢いで追って行って強引に通せんぼしてとっちめる、のがやりすぎだとクビになってしまうのがいかにも勝新らしい。
それが、そのキップの良さを買われて謎の組織に拉致監禁された上で、世のため人のためにならない奴を消す仕事をしないかと誘われて「人斬り」みたいに悪賢い奴に利用されてわけもわからず殺しまくるようになるのだが、その利用する側が様式化されすぎている上に宮川一夫の撮影がいかにも凝っていて、鈴木清順の「殺しの烙印」や「野獣の青春」に近い美学的に相当にデフォルメされた殺し屋ものになる。
船越英二が拳銃を分解した上でハンマーとバーナーで跡形もないように処分するのをバカに克明に撮ったり、一瞬で回転する旋盤を止めてしまう接着剤を開発したりと、市川崑作品とすると初期の喜劇のような奇矯な味を出しているが、勝新だと暑苦しくて人工的でモダンな枠組みを壊してしまう。
市川崑のモダニズムは市川雷蔵の端正な「静」の持ち味には合うけれど、勝新とはあまり合わない感じ。