きのう(3月7日)、ある学会の委員会に出席。
毎回、交通費として3000円が支給される。お医者さんたちから様々な知識や情報を得ることができたうえに、いくらか意見を陳述するだけで、実費以上の交通費を頂戴できるので、不労所得も同然。
申し訳ないとは思いつつ、帰りがけにビック・カメラに立ち寄り、いただいた交通費で西部劇DVDを買ってしまう。
昨日買ったのは、3月5日に発売されたばかりの(「MGM スーパー・ライオン・キャンペーン 初回生産限定 1000円均一版」とカバーに銘打ってある。意味不明だが、安いにこしたことはない。)“大いなる西部”(20世紀FOX)890円、同じシリーズの隣に並んでいた“アパッチ”890円、そして、帳尻合わせのために“ティファニーで朝食を”(パラマウントDVDコレクション)1340円(定価1500円の1割引がなんで1340円なのか?)の3本、計3120円。
しかし、これらは夜中に眠れなかった時のための専用で、昨夜見たのは、以前に買ってあった“シマロン”という古いもの。
1930年製作で、登場人物たちはチャップリンかエノケンのようなメイク、動きも時代がかっているうえに、ノイズも少なくない。
これを選んだのは、芦原伸『西部劇を読む事典』の解説で、19世紀末のいわゆる「ランドラッシュ」が描かれていると書いてあったから。
ランドラッシュというのは、要するに合衆国政府が西部を開拓させるために、先住民からほぼ騙し取った(少なくとも“シマロン”ではそう描かれている)土地を早い者勝ちで開拓民に無償提供する制度である。
法律では「無主物先占」などという。自分の庭に迷い込んだスズメなどは捕まえていいということである(動物愛護法ではどうなるか知らないが)。ランドラッシュの場合は、先住民がいたのだから正確には「無主物」ではないのだが。
話は1888年のオクラホマに始まる。町のならず者に背中を撃たれて死んだ先代の新聞経営者を継ぐべく、弁護士でもある主人公が町(後のオクラホマ・シティか)にやって来る。
シマロンは、主人公の息子の名前で、スペイン語で「無法者」という意味だそうだ。息子にそんな名前をつけたといって、嫁さんの母親が激怒していた。
彼は新聞を発行しながら、町の牧師も勤め、無法者たちを一掃し、冤罪を着せられ町から追出されそうになった薄幸の女性を弁護して無罪を勝ち取り、やがては州知事選挙に立候補するまでになる。
しかし、清貧を貫き、家は貧しい。インディアン居留地の石油の利権を騙し取ろうと提案してくる町の有力者も追い払ってしまう。やがてはキューバ独立を支援するといってオクラホマから消えてしまう。新聞社と家庭は残された妻が切り盛りする。
ちなみに、開明的な主人公は、インディアンのことを“red man”と呼んでいた。彼の家にはインディアンの娘が召使いとして働いていたが、その娘はやがて主人公の長男と結婚する。インディアンの描かれ方も、西部劇を見るときに気になるところの1つであるが、この映画が作られた1930年には、既に、白人がインディアンの土地を奪ったという贖罪意識がみられる。
時代は下って、1930年のオクラホマ。妻は町の名士となり、下院議員に当選する。その祝賀会の当日、町外れの油田で爆発事故が起こり、一人の老人が身を挺して大爆発を回避させた。
下院議員である妻が駆けつけると、そこには、長い間行方不明だった夫が倒れており、妻の腕に抱かれて息を引き取る・・・。
全く期待なしに観たのだが、これも合格点以上の出来だった。
* 写真は、ファーストトレーディング版“Clasic Movies Collection シマロン”、1931年、原題は“Cimarron”。