今日の午後、2時間20分の空き時間ができた。
書きかけの原稿は、2時間でどうこうできない岩盤にぶち当たっている。
そこで、500円DVDを買ってきて見ることにした。大学近くの書店に出かけると、家の近所では見かけないCosmic Pictures というところのシリーズが並んでいた。字幕は日本語のみ。
空き時間から逆算して、2時間以内のものでなければならない。キープ版にあるものはキープ版で買いたいから(英語字幕もついているので)、キープ版にはないものにしたい。
しかし、この基準に合ったものがまったくない。ほとんどがキープ版にもあるものなのだ。仕方がないので、英語字幕がなくても影響のない英語以外のものにすることにした。
一番観たいと思ったものは、イヴ・モンタンの“恐怖の報酬”。しかし上映時間は148分と、大幅にオーバーしている。迷ったが、時間はどんどん少なくなっていく。途中まででも見ようと、ようやく決断して、買って帰る。
数年前に、イヴ・モンタンの落とし子だという女性が、既に亡くなっていたイヴ・モンタンに対して、死後認知の訴えを起こしたことが新聞で報じられた。
親子鑑定のために、埋葬された遺体の発掘を許可する裁判が下されたということだった。その時の朝日新聞の見出しが、「眠れるモンタン、“恐怖の報酬”!?」となっていた(1997年11月7日付夕刊)。
そのとき以来、“恐怖の報酬”というのは、どんな内容の映画だろうと思っていたのである。
どこか熱帯の油田で火災が起き、爆風で消火することになり、イヴ・モンタンら4人が高額な報酬につられて、ニトログリセリンをトラックで運搬するという危険な仕事に従事する。
最後の30分くらいを除くと、スリリングさが全然感じられない。現代のせわしなさに比べると、あまりにのんびりした運転ぶりなのである。
最初は積極的だった、シャルル・ヴァネルがだんだんと弱気になっていく変化がぼくには説得的に思えなかった。本当は怖気づいているのに、それを隠してかえって無謀になってゆくイヴ・モンタンに、シャルル・ヴァネルが嫌気をさしたのだろうか。
いずれにしても、90分で十分の映画である。
昔住んでいた通りにあった壁の向こう側は空地だった、という最後の台詞の意味もなんだったのだろう・・。
* 写真は、Cosmic Pictures 版“恐怖の報酬”1953年、原題は“Le Salaire de peur”.