“市民ケーン”を見た。
何か面白くなさそうで、昔から敬遠してきた映画だったが、ひょっとして食わず嫌いかもしれないと思って、先日500円DVDを買った。
そして、きのう(3月22日)の卒業式の後、夜の追い出しコンパまで時間があったので、研究室のパソコンで見ることにした。
やっぱり、ぼくの苦手な映画であった。面白くないのである。水野晴郎の解説によると、さまざまな新しい試みを取り入れた映画らしいが、「次にどうなるのだろうか?」という気持ちが全然起きないのである。
途中、アル中の2番目の妻に会いに行くあたりでついに眠ってしまい、目が覚めたら、貧しかったコロラドでの子供時代に使っていた、そして成金になったとき、迎えに来た後見人役の銀行家に投げつけた木製の雪そりがゴミとして燃やされるシーンだった。
「バラのつぼみ」という謎の文字も、その雪そりに書かれた文字だった。
佐藤忠男『世界映画100選』(秋田書店、1974年)によると、オーソン・ウェルズ、25歳のときの作品で、モデルは「新聞王」ハーストらしい。
かれの紹介によると、ハーストとピュリッツァーが競って煽るようなことをしなければ、米西戦争は起こらなかったかもしれないというくらいの影響力を持っていたという。
映画の中でも、ケーンの新聞が「売らんかな」で戦争の危機をあおると、銀行家が「キューバで戦争なんか起きていない」と反論するシーンがあった。
こういった内容がハーストの逆鱗に触れたため、彼の息のかかった新聞に酷評されたり、上映を妨害されたために、この映画は興行的には惨敗を喫したと書いてある。
ぼくは、興行的な敗北の原因はそれだけでなく、内容のせいだろうと思う。なんか薄暗くて、汚い画面なのである。埃にまみれた物置部屋を見せ付けられているようで気がめいってくる。
これでは、ハーストの妨害がなかったとしても、それほどヒットしたとは思えない。映画はただの娯楽、画面が動く大人のおもちゃ、時間潰しにすぎないと思っているぼくには無縁の映画だった。
まあ、話のタネに見ておくかという程度の映画だった。
* キープ(KEEP)版“水野晴郎のDVDで観る世界名作映画[黒8] 市民ケーン”(1941年)のケース。