雨、18度 福岡
福岡は昨日の昼過ぎから雨になりました。静かな雨です。雨が降り出す前までは、きれいな空でした。福岡の人たちは蒸し暑いといって汗を拭います。香港に永い私は、爽やかな気候に感じます。静かな雨がまた心地よく傘を持っているのに開かずに歩いてみました。
夕方には家の建具をお願いしている方と会う約束です。一足先に家に入りました。雨戸を全部開けて見ると、人が住んでいないのに家具にはうっすらとほこりがのっています。さて、お仏壇から掃除です。簡単な掃除を済ませて、二階のデッキに出てみました。まだ、雨が降っています。デッキの右横には、切られるはずだったびわの木がきれいな葉っぱを付けています。その葉っぱの合間に、黄色い実が見えています。
木姿の決してよくないこの木は切られるはずでした。それを残してもらいました。このびわの実を喜んで食べた犬の思いでがあります。大きな種は、その犬が食べた後にコロンと残っていました。犬の名は「おのこ」。しかもわざわざ座敷に持ち込んで食べていました。雑種の犬でした。
びわの実を下のデッキから見ていると、隣家との境の壁には、 でんでん虫がのんびり這っています。香港のでんでん虫の5分の一ほどです。でんでん虫好きの私は、這ってる姿を見るのが好きです。庭を見回すと、あちらにもこちらにもでんでんさん登場です。
母が手入れを怠って数十年、荒れに荒れた庭は思い切り木を伐採し日差しを取り込む事にしました。枯れてしまった玄関の松や池の横の梅。私には思い出の深い木が無くなってしまいました。その代わり、お日様をサンサンと受ける事が出来ます。この庭の生態系も変化した事と思います。蚊は少なくなってくれると嬉しいのですが、カエルやでんでん虫は残って欲しかった。春ですから雑草がビヨンと伸びています。抜こうか迷いました。いえ、雑草もこの家の命です。抜かずにおきましょう。雑草さん、カエルやでんでん虫をよろしくね。
場所を移された蹲いの石、貧弱に見えます。それでも、雨に濡れると 昔の面影が浮かんできます。
まだ、建具屋さんはやって来ません。下のデッキに椅子を出して静かな雨の降る庭を眺めます。雨を充分に吸った庭の土からにおいが立ち上ってきます。胸に染み渡るこの土のにおい、私が育った家の土のにおいです。コンクリートだらけの香港での生活、土のにおいまで懐かしく感じます。
いつこの家の住むようになるのかしら、それまでは、この庭になる実は、全て鳥さんたちに差し上げましょう。