曇り、25度、91%
我が家の玄関ドアを開けると、右手にダイニングテーブルが見えます。一般的な香港のマンションの作りです。そのダイニングテーブルの上には、主人が在宅中は日本の2リットル入り水のペットボトルがのっています。主人が出張に出かけると、即座にそのペットボトルは台所へと移動します。日本の水は主人専用の水です。大きさは関係ありません、ペットボトルが家の食卓にのっている景色がどうも好きになれません。
日本に限らずニュースで会議の場を見ていると、ペットボトルがそれぞれに配られています。ガラスのコップが添えられていることもありますが、概ねペットボトルのみ。会議に出席の女性はペットボトルから水を飲まなくてはなりません。屋外のピクニックや山登りとは違います。一昔前までは、日本なら湯のみが置かれていました。先日、ホワイトハウスの会議の様子がニュースに映ります。見ると、テーブルの上にはティーカップとソーサーがのっています。コーヒーかお茶かは定かではありません。お茶をこぼす、カップを割ることもあるだろうのに、カップにソーサーを添えてテーブルにのっていました。いい感じです。
そんな私の事を知ってか、主人がひと月ほど前にペットボトルの水をウォーターピッチャーに入れ替えておいて欲しいと言い出しました。しかも、ウォータピッチャーはガラスや焼き物でなくて、出来たら銀器がいいと言います。割れないからです。久々に銀器が買えると、勇んでクリストフルの店に出かけました。緩やかなカーブのピッチャーは蓋が付いていません。レースの帽子でものっけようかと考えます。保温性のあるピチャーは大小2種類。一応見せてもらって主人に相談します。お値段が張るので私一人では決められません。ちょうどロンドン、リスボンに行く予定がありました。ならば、あちらで探そうという事になりました。
ロンドンでは時間がありませんでした。リスボンでは、ホテル内の2軒のシルバ−の店ともう一軒の店で、あるだけのピッチャーを出してもらって、見比べ持ち比べます。どれもこれも納得いきません。いいなあと思っても、重すぎたり、小さすぎたり。結局買わずに戻ってきました。
昨日、ゴルフをお断りして家にいる主人、旅から戻っても出張続きです。お疲れに違いありません。と思っていると、昼食後、外出の用意をしています。聞くと、時計のベルトや仕事の鞄が傷んだので見に行くとおっしゃいます。私は午前中、目一杯あっち行き、こっち行きしたのでお供はお断りしました。
夕方、帰って来た主人が持って帰って来たのは、 大きな包みです。開けてご覧とおっしゃいます。急急、 中身は察し済みです。蓋付きの保温可能な大きい方のピッチャーが出てきました。
早速水を入れてみます。1リットル入ります。これで、テーブルの上のペットボトルの姿は消えてなくなりました。 後ろ姿もなかなかです。また磨いてやらなくてはならない奴が増えましたが、大きなペットボトルがテーブルにのっているよりましです。
夕食の時、主人がいつまでこのピッチャーのお世話になるかな、と言います。割れませんから、永いお付き合いですよと答えました。夜中に起きて主人が水を飲んでいます。カチャッと金属音が聞こえます。ピッチャーの横にはガラスのコップ、そう思い浮かてニンマリ。
屋外では違和感ないペットボトルです。割れない、軽い。なのに家に持ち込んだ途端、味気ないものに感じます。