晴、20度、70%
装幀家「平野甲賀」が亡くなったのは昨年のことでした。亡くなる前にご自身が書いた本、「平野甲賀と」を見つけ購入しました。
私の本好きは、本の内容も勿論ですがその本の作られ方、題字、文のフォント、紙質まで含まれます。そんな本好きにしてくれたのは「平野甲賀」です。「晶文社」という出版会社があったのは1990年代まででしたか?私自身香港移りましたので記憶が定かではありません。その「晶文社」の本のほとんどの本のデザインをしたのが「平野甲賀」です。印象的な文字のデザイン、一目見て「平野甲賀」の手になるものだとわかります。本の大きさも、内容によって規格外の大きさがあったりと、本の持つ楽しさを教えてくれました。今では「ブックデザイナー」と呼ばれるそうですが、私は「装幀家」だと思っています。
お金のない生活で月に単行本を買えるのは一冊程度でした。本屋で手に取る「晶文社」の本はあの当時の私の大きな喜びでした。30年間日本に残していったたそれらの本をこの家の整理の時に捨て切れずに手元に置きました。たくさんの本を捨ててしまったのに残したのは「晶文社」の本ばかりです。全てブックデザイン、「装幀」は「平野甲賀」です。
「平野甲賀と」ではそのブックデザイン、文字のデザインについての12本の文章と下書きらしい文字デザインが「阿波和紙」に印刷されています。手に取ると感じます。端正さの中の破天荒な文字、そして紙質の調和、ご自身の本を装幀するとこうなるのだと惚れ惚れと眺めます。
亡くなったあとご家族が出された「平野甲賀と2」、部数限定の本が今日届きます。お金がない中、月一冊「晶文社」の単行本を本屋で手にした時と同じ胸の高鳴りで、今日は幾度もポストを覗くことになりそうです。
本の装幀の妙を教えてくれた「平野甲賀」です。Macを前に頬杖をつく姿に「ありがとうございました。」