チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

志村ふくみ 「一色一生」 他三冊

2021年03月15日 04時00分14秒 | 

晴、9度、94%

 半年前から注文していた本が海の向こうから届くまで10日ほど時間がありました。兼ねてから気になっていた染織家「志村ふくみ」さんの本を読むことにしました。帰国するまで志村さんが本をお書きになっていることを知りませんでした。植物から色をもらい、染めその糸を織り上げる染織家として高い評価のある方です。織られた物はとても手の届く品ではありません。手のひらほどの「桜」で染められた「古袱紗」を一枚持っています。 桜のない香港ではこの「古袱紗」を見ては日本の桜を思いました。志村さんの本を読む間、手元に置きました。

 染織の指南書ではありません。糸紡ぎ、染め、織りを通じて志村さんの胸に登る思いや人との話から学んだこと、読まれてたくさんの本の話です。 「一色一生」「私の小裂たち」「語りかける花」「色を奏でる」

 「染め」に使われる植物名は全て和名、染め出された様々なグラーションを持つ色名も全て和名、「織り」の文様も全て和名、うろ覚えな知識では付いて行けないとこの四冊を読む間、 傍には参考にする本を携えました。

 お写真でしか「志村ふくみ」さんを存じません。和服をきりっとお召しになったその目はとても強いものを感じます。本を読み進めると、染織を通して見る植物、景色、人の心、織りあがった布に至るまで志村さんの目は「智」と「理」で捉えています。女性的な「情」を交えた文体ではありません。どこまでも覚めた目、その奥で動く自然への敬愛を感じます。

 三十歳を越しての染色家としての出発、お名前が世に出た頃から30年、私は香港でした。ただただ、草木から染め出され織られる志村さんの織物に惹かれていました。タマネギや紅茶でしか染めをしたことはありません。それでも染まる過程の色が変わっていく様子は感動します。草木染めと簡単のようですが、荒仕事です。木を切る、皮を剥ぐ、煮出す、灰を作る、そして繰り返し染めて色を求めて行く、その先に織りという仕事があります。私には気の遠くなる一工程です。

 どんなに興味があろうと今から始めるわけにはいきません。柔な頭をしっかりとさせ背筋を伸ばしてこの四冊を読みました。なんとも潔い本です。文体が揺るぎなく感じます。大正末にお生まれの志村さん、九十歳をずいぶん超えていらっしゃるはずです。志村さんの著書はまだ数冊あるようです。時間を見つけて読み進めたいと思っています。

 海の向こうから待っていた本が届きました。今日からは頭を緩くしていつもの本読みを始めます。


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