大雨、20度、94%
麻の布に艶のない「花糸」と呼ばれる木綿の刺繍糸のクロスステッチを始めて40年以上になりました。このクロスステッチはデンマークが起こりです。40年のうち一番多く刺して来たのは花の図案、しかも1995年に亡くなった「ゲルダベングトソン」という人の図案ばかりです。
昨日、庭の「ジキタリス」のことを書きました。このクロスステッチをする古くからの友人から「ゲルダさんの図案にもジキタリスがあるね。」とメッセージが来ました。ジキタリスの額は家の壁にかかっています。
40年前の日本、まだ生のハーブなど売っている店はありませんでした。この刺繍の図案で初めて知るハーブの花や姿もたくさんありました。 「タイム」です。ひと針ひと針刺しながら、「タイム」ってこんな可愛い花を咲かせるのだと胸を躍らせました。香港時代も「タイム」の苗を幾度かプランターに植えましたが、あの高温多湿で花を咲かせるまでにはなりませんでした。私の庭造りの一番の目的はハーブの一角を作ることでした。今ではビワの木の下にたくさんのハーブが真冬でも緑をたたえています。もうしばらくすると蔓延った「タイム」も花を付けます。
帰国して3年、やっとこの1週間ほど針を持つようになりました。細かい麻の目を取っていくこの刺繍は若い時のように手が進みません。ゲルダさんの花の図案の多くに見られる特徴があります。植物によっては「根」や「球根」まで描かれていることです。他の国の花の刺繍の図案には見られないことです。 「球根」が描かれていた「ホロールート」。 「根」が描かれている「ポピー」。 「瑠璃草」。
今のようにネットで調べればすぐに写真が出てくる時代ではありませんでした。花を刺しながら花を覚えていきました。そしてその花やハーブを自分の手で育てたいといつも思っていました。
この「根」や「球根」をなぜゲルダさんが図案に入れたのか、いつも不思議に思っていました。庭仕事をする人なら、「球根」や「根」も含めて植物と付き合います。そして、土の下の「球根」や「根」もまた美しいことを知っています。このクロスステッチはデンマークの国の輸出の大きな部分を占めていることを知りました。そしてデンマークの輸出品の中で大きな稼ぎを得ているのは「ロイヤルコペンハーゲン」の食器だそうです。
このコーヒーカップに描かれた花は素朴な小さな花です。裏を返すと ご覧のようにこの花の「根」が書かれています。「フローラダニカ」と呼ばれるこのシリーズは全て「根」が描かれています。
ゲルダさんはきっとこの「フローラダニカ」のシリーズを模して「根」や「球根」を描きこむ図案を考えたのではないでしょうか。
このコーヒーカップで紅茶をいただきながらそんな思いに至りました。あと数日で今回の刺繍を挿し終えることが出来そうです。もちろん花の刺繍です。
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