気ままに

大船での気ままな生活日誌

その名は蔦屋重三郎

2010-12-03 11:27:40 | Weblog

六本木のサントリー美術館で”歌麿・写楽の仕掛け人/その名は蔦屋重三郎”展を観てきた。とても、面白い企画で主人公が、浮世絵版元、蔦屋重三郎なのだ。彼の名前は、寛政6年、突如、無名の新人、写楽の役者大首絵28枚を売りだし、大当たりした版元として知っていたが、それ以上のことはあまり知識がなかった。この展覧会で、蔦屋重三郎と、彼の”お抱え絵師”歌麿の、それぞれ多彩な活躍ぶりを知ることができ、とても楽しくみさせてもらった。

どこから書いて良いかわからないが、おもいつくまま、あれもこれもでいってみよう。第1章に”蔦重とは何者か?江戸文化の名プロデューサー”とあったが、まさにそうだった。時代の流れを敏感に察知し、あるときは、華やかに、寛政の改革などで厳しい規制が入るとそれなりの浮世絵や絵本を出す。そして彼自身も狂歌師としても活躍する。狂歌名を蔦唐丸(つたからまる;爆)と称した。(蔦のからまるチャペルで・・の蔦唐丸です、まだピンとこない人のために;爆)。狂歌本もたくさん展示されていた。ぼくはこういう和本をみるだけでうれしくなってしまうので、もうこれで一満足(笑)。

狂歌といえば、狂歌と浮世絵を合わせた絵本も面白かった。”画本虫撰”(宿屋飯盛撰/喜多川歌麿画)では、毛虫、むかで、いもむし、かたつむり、こがねむし、赤とんぼ等々、様々な虫の絵が描きこまれ、そこに、それぞれの虫に関連した狂歌が書きこまれている。たとえば、”くつわむし”の絵では、こんなざれ歌が。”かしましき女に似たるくつわ虫・・・”とか(爆)。すべて恋のざれ歌だが、驚いたのは、歌麿の昆虫や草花の描写がすばらしいこと、歌麿といえば、遊女や娘さんの絵ばかりと思っていたが。

もちろん、遊女の絵もある。吉原の遊女の一日を描いたのもあった。ほとんど寝る時間もないほどの過密スケジュールだった。大変な仕事なんだ(笑)。歌麿は、蔦重プロの大スターだから、往年の美空ひばりのように次々とヒット作を出していたのだろう。この展覧会でも、通常の浮世絵や前述の絵本のようなものまで、大量の作品をみせてもらえる。一度に、こんなにたくさんの歌麿をみたのは初めてだ。

写楽ももちろん出てくる。役者大首絵も5、6枚はあった。そして、若き日の北斎(当時の名は勝川春朗)の役者絵も目にしたのもうれしかった。蔦重は名プロデューサーであるので、新人の発掘も得意なのだ。

歌麿、写楽を中心とした浮世絵、山東京伝の黄表紙、洒落本、大田南畝らの狂歌本、”版元書店”の復元などの多彩な展示は、従来の浮世絵展覧会とは大分、趣の違った、楽しい展覧会だった。もう一度行ってみたいと思うが、今月の19日で終わってしまう。行けるかどうか。

 

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落柿舎

2010-12-03 09:32:28 | Weblog

昨晩、芭蕉の句碑のことを書いていて、先日訪れた、京都嵯峨野の落柿舎のことを思い出した。周知の通り、ここは、芭蕉の第一の門人、去来の遺跡である。そこでもらった資料によると、去来がここを営んだのは、貞享四年頃(1687年)で、芭蕉は三度も、訪れ、元禄四年に4月18日から5月4日まで逗留し、”嵯峨日記”をしるした。現在の落柿舎は、明和7年(1770)に再建したもので、向井家の支族にあたる俳人が建立した。

ぼくは、中、高校の修学旅行で京都・奈良を巡った。川崎市の中、高校では修学旅行の定番なのだ。高校生のときに、ここに来た。金閣、銀閣、清水と有名どころを回ったが、何故か、ぼくが一番、心に残っていたのが、この落柿舎なのである。うらぶれたような、小さな庵の面影がずっと後まで脳裏から離れなかった。当時、ぼくは、軽い結核に罹っていて(その後、すぐに治ったが)、気分的に弱っていた。そんな心の風景とここの雰囲気が、マッチしたのかもしれないと、今になって思う。

だから、今回、嵯峨野の華やかな紅葉巡りの中に、ひとつ、ここも入れておいたのだ。もう、あの頃から半世紀もたってしまい、当時と違い、ぼくは、老いてますます盛んな状態で(大汗)、落柿舎を再訪したのだった。

懐かしさがよみがえってきた。小さな庵は、少しこぎれいになっていたが、雰囲気は変わらない。当時、気付かなかったが句碑が随分とある。あとからつくられたものもあるのだろう。芭蕉、去来、そして鎌倉の虚子の句碑まである。そんな句碑をみながら、溢れるような紅葉ですっかりのぼせあがっててしまった頭を、ここで、溢れるような思い出で満たし、しばらく冷やしていたのだった。

虚子の句碑。生前最後の自筆句碑だそうだ。 

凡そ天下に去来ほどの小さき墓に参りけり 

まだ柿は落ちていなかった(笑)。

 

 

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