六本木のサントリー美術館で”歌麿・写楽の仕掛け人/その名は蔦屋重三郎”展を観てきた。とても、面白い企画で主人公が、浮世絵版元、蔦屋重三郎なのだ。彼の名前は、寛政6年、突如、無名の新人、写楽の役者大首絵28枚を売りだし、大当たりした版元として知っていたが、それ以上のことはあまり知識がなかった。この展覧会で、蔦屋重三郎と、彼の”お抱え絵師”歌麿の、それぞれ多彩な活躍ぶりを知ることができ、とても楽しくみさせてもらった。
どこから書いて良いかわからないが、おもいつくまま、あれもこれもでいってみよう。第1章に”蔦重とは何者か?江戸文化の名プロデューサー”とあったが、まさにそうだった。時代の流れを敏感に察知し、あるときは、華やかに、寛政の改革などで厳しい規制が入るとそれなりの浮世絵や絵本を出す。そして彼自身も狂歌師としても活躍する。狂歌名を蔦唐丸(つたからまる;爆)と称した。(蔦のからまるチャペルで・・の蔦唐丸です、まだピンとこない人のために;爆)。狂歌本もたくさん展示されていた。ぼくはこういう和本をみるだけでうれしくなってしまうので、もうこれで一満足(笑)。
狂歌といえば、狂歌と浮世絵を合わせた絵本も面白かった。”画本虫撰”(宿屋飯盛撰/喜多川歌麿画)では、毛虫、むかで、いもむし、かたつむり、こがねむし、赤とんぼ等々、様々な虫の絵が描きこまれ、そこに、それぞれの虫に関連した狂歌が書きこまれている。たとえば、”くつわむし”の絵では、こんなざれ歌が。”かしましき女に似たるくつわ虫・・・”とか(爆)。すべて恋のざれ歌だが、驚いたのは、歌麿の昆虫や草花の描写がすばらしいこと、歌麿といえば、遊女や娘さんの絵ばかりと思っていたが。
もちろん、遊女の絵もある。吉原の遊女の一日を描いたのもあった。ほとんど寝る時間もないほどの過密スケジュールだった。大変な仕事なんだ(笑)。歌麿は、蔦重プロの大スターだから、往年の美空ひばりのように次々とヒット作を出していたのだろう。この展覧会でも、通常の浮世絵や前述の絵本のようなものまで、大量の作品をみせてもらえる。一度に、こんなにたくさんの歌麿をみたのは初めてだ。
写楽ももちろん出てくる。役者大首絵も5、6枚はあった。そして、若き日の北斎(当時の名は勝川春朗)の役者絵も目にしたのもうれしかった。蔦重は名プロデューサーであるので、新人の発掘も得意なのだ。
歌麿、写楽を中心とした浮世絵、山東京伝の黄表紙、洒落本、大田南畝らの狂歌本、”版元書店”の復元などの多彩な展示は、従来の浮世絵展覧会とは大分、趣の違った、楽しい展覧会だった。もう一度行ってみたいと思うが、今月の19日で終わってしまう。行けるかどうか。